#S-15 正に、または負に。

そして、壁が壊れていく。そこには、三人の倒れた人の姿と、倒壊していく家の姿があった。


即座に俺たちはその三人を回収して、組織に戻って、さっさと収容した。


こいつらも不憫なもんだ。


そして、神がいなくなって、持っていたのは三人。必然的に、此方は、組織の中に入らなきゃいけないことになったのだが。


意外にも、組織で歓迎されて、パーティを開くことにまでなってしまった。


なんでだよ。こいつ元囚人だぞ?それでいいのかお前らは。


まぁ…。なんやかんやで、パーティが始まってしまった。もちろん、此方は色んな人から、好かれているのか、休む暇もなく、話し込んでいる。


「…大丈夫ですか?」


そう聞いてきた、懐かしい声は。


「あぁ。大丈夫だよ。少し、飲み過ぎちゃてね。…。少し涼んでくるよ。」


どこか、儚げだった。



この誰もいない屋上はとても楽だ。今は、夜の23:30ぐらい。これぐらいの月明かりと、街の光が一番好きだ。


誰もいないし、一人の世界に浸れるのがとても心地いい。


だけど。何かが足りない。そう感じていると。


「お邪魔します…。」


と、美奈さんが扉を開けてきた。


「…別にここ俺ん家じゃないから。」

「あっ、そうでした…。じゃ、なんて言えばいいでしょうか?」

「うーん。別に何も言わなくても良くない?音でわかるんだし。」

「えっ?わかるんですか?」

「えぇ。丸わかりですよ。なんせほとんど音が聞こえない場所ですし。」


そんな会話をしていると、美奈さんが隣に座ってきた。


「そういえば、音が聞こえないといえば。さっき、妙なことがありましたよね。」


多分、時止めのことだろう。


「あぁ、アレな。視界は真っ暗だし、音も聞こえないしで。」

「みんなそうやって言うんですよ。私は体は動いたんですけど。周りのみんなは、問いかけに反応してもくれなくて。」

「え…?」

「あれ?でも音って聞こえてたっけ…?あはは〜忘れちゃいました。」

「あ、あはは〜。」


どういうことだ?どういうことだ??どういうことだ!


全人類ああなったというのは聞いてはいないが、こんな例外がこんなところにいてもいいものか。


しかも、本人は自覚がない。まぁそれは当たり前なのだが。


考えれば考えるほど。わからなくなっていく。


「…。」

「…。」


会話の方は、無が続く。俺も思考を廻らすのはあまりにも嫌になったから、会話が欲しい。


でもそれはすぐに叶う。


「紫苑さん。私思ったんです。私って、紫苑さんが好きなのかなって。」


よりにもよって、恋愛系の話なのかよ。


「…。はぁ。」

「…でも。紫苑さんは、いっつも仕事のことに没頭していて。あまり言う機会もなくて。しかも、あんなに可愛い子を連れて、帰ってきて…。」

「…。」

「だから。自分自身の自信がなくなってきちゃって。」

「なんだ?あいつに嫉妬しているのか?」

「…嫌…しては…」

「俺はしてるぞ。あいつにな。」

「…?」

「あいつ、俺に近づくために、お前の体を使ったんだ。…だから、俺はあいつのことを妬んでいるというか…。…うん。好みじゃない。」

「じゃ、大丈夫…ですか…?」

「大丈夫…だが。こんなクソみたいな仕事が終わってからだ。本当はこんな仕事したくなんてない。」

「ふふ。私もそう思っています。」

「なら…。することはひとつだけだ。」

「そうですね!」


そう言って、二人は結託した。恋人として。



「あらら。もう盗れはしないかなぁ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る