第17話
「おい。いい加減にしろ。皇帝陛下に無礼であると思わないのか」
第七師団長の言葉を気にも留めず、むしろ鼻で笑って飛ばす。胸を張り堂々と、敢えて師団長を掠めると踊りながら議員の息子は言った。
「どけ、今は自分が陛下と踊っているのだ。邪魔をするな」
師団長は硬く手を握る。そして議員の息子に歩み寄ると、肩を掴んで引き離し、固く握った拳を顔面にありったけの力を込めて叩きこんだ。
議員の息子は綺麗に半回転をして、頭から床に叩きつけられる。ようやく解放された皇帝は、その場に座り込むと激しく息を切らしていた。
「何だお前は! 一兵卒の分際で」
頬を抑え、唇から血を流しつつ議員の息子が喚く。師団長は議員の息子を見下ろしながら、殴り飛ばした拳を見せつけた。
「連合だろうと何であろうと、とやかく言われる筋合いはない。私は皇帝陛下の兵士だ。手出しは許さん」
そう言い放ち、背を向ける。そして座り込む皇帝の傍に寄ると、優しく彼女に手を添える。大丈夫ですかと聞いた時、議員の息子がおぼつかない足取りで立ち上がった。
「このままでは気が済まん。貴様、覚悟しろ」
外套の下から短剣を抜く。周囲から上がる悲鳴を無視して、切先を師団長に向けたまま、議員の息子は走り出す。
危ないと、皇帝が叫ぶより早く。師団長は立ち上がりつつふり返る。外套を大きく広げながら、議員の息子の腕を片手で掴むと、強く引き寄せ、鳩尾めがけて拳を入れた。
短剣が手から離れて落ちるも、議員の息子の服を掴む。間髪入れずに足を払うと、硬い床に叩きつけた。
「皇帝陛下の御前であるぞ。身の程をわきまえろ」
すぐに近衛兵がやって来て、議員の息子を拘束する。師団長が、牢にぶち込め、と言うと、議員はため息をついて目を閉じた。
「陛下、お怪我はございませんか」
そう言って師団長が手を差し伸べる。問題ない、と手を取った時、周囲から拍手と共に感嘆のため息が漏れた。
「師団長、感謝する。お前こそ怪我はないか」
「私の事はお気になさらず。かすり傷一つ有りません」
「真か? 顔が赤らんでおるようだが」
「少し動いたからでございましょう。陛下こそ、お顔が真っ赤でございます」
「愚か者、酒を五杯は飲んだのだぞ。赤くなるに決まっておろう」
皇帝が師団長に笑って見せる。今まで見たこと無いような笑顔を前に、師団長は息を呑むと、咳払いしてそっと視線を外した。
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