第10話
「雷の魔神とな。雷の勇者では無くか」
「左様でございます」
雷の勇者ならばこの程度、容易くやってのけるだろう。手にした剣に高電圧を流し込み、破壊力を向上させる。それが戦闘スタイルだ。何十、何百もの剣を無駄にしてきたとも聞くが、その内の一本のようにしか見えなかった。
「我が連合には雷の魔神の伝承がございます。何百年と昔の事、巨龍災害に見舞われました。当時の技術、勇者では龍に抗う術を持たず、傷一つ付けられなかったのです。人々は蹂躙されるのを、ただ眺めるだけしかできないで居た時でございます。突如として雷鳴が響き渡り、白い光が包み込みました。やがて光が失せた時、龍は真っ二つに裂かれ、同時にこの剣が落ちていたのでございます。人々は龍によって荒らされた地を再び開拓し、土を起こし苗を植えました。すると、驚くことに苗は良く育ち、多量の実りをもたらしたのでございます。後日人々の間で、雷の光の中に人影を見た、と話が広まり、その存在は後世に雷の魔神と伝えられる事になったのでございます」
「聞けば聞くほど、雷の勇者だな」
皇帝は杖を侍女に預けると、剣を取り、引き抜こうと力を加える。だが剣は溶けた金属によって鞘と接合しており、抜ける気配は無かった。
「その剣には雷と豊穣、即ち破壊と再生の力が宿ると、崇められておりました。雷の勇者といえども、豊穣の力までは持ちますまい」
皇帝は剣を木箱へと戻す。そして議員の一人を見下ろしながら、静かに尋ねた。
「無償で人々を救ったと?」
「はい、そのように聞き及んでおります」
「ならば雷の勇者では無いな。奴は根っからの守銭奴だ」
頂戴しよう。そう言うと、侍女が箱ごと剣を受け取り、隅へと下がる。合わせて召使も議員の背後へと下がると、面を上げよ、と言った。
「して、此度の議題は共和国への対応だったな。会談は後ほど、別室にて執り行う。手筈通り、今日と明日、二日間の予定だ。各々一度部屋へと戻り、楽に臨むと良いだろう。また、今宵は晩餐会を開催する。我が帝国きっての料理人が精一杯に腕を振るう場だ。ぜひ貴公等も参加し、存分に楽しんでくれ」
侍女から杖を受け取る。そして杖で床を突いた時、議員達は立ち上がり、深々と頭を下げる。そしてもう一度突くと、大きな扉が開かれた。
議員たちが退場し、皇帝は直れ、と一言だけ言うと、大臣達は苦しそうに立ち上がった。
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