第2話 電気

 彼は目覚めた。不思議な夢を見た。現在午前4時30分。眠っていた時間は3時間だが、まるで何十年も不可思議な世界に滞在していたかのような気分だと、彼は顔で伝えている。

 彼の名前は田中太郎。年齢は6歳。父はおらず、母は昼間寝、夜に出かける。彼女が何をしているか、彼は知らない。

 先ほど見た夢は現実か、非現実か、それとも前世か、後世か。。と思いながら、一杯の水を飲んだ。喉に水分が伝うのを爽快に感じるであろう表情だ。

 ふととつぜん、彼は大声を上げ始めた。さきほどの世界に恐怖を感じたのである。手に持っているコップを投げ、冷蔵庫に叩きつけ、割る。

 家にいるのが怖くなり、玄関に駆けていった。靴を履くのも忘れ、扉を開け、外へと出た。

 夜中の外はいつも何気なく目にする世界とは明らかに様子が違っていた。何も見えない、寒さだけが身体全体に伝わってくる。走って走ってひたすらに走った。

 光が射してきた。これはなんの光であろうか。陽の光ではないことは確かだ。彼は安堵した。懐中電灯の光だ。人に出会えたことに彼は安心感を抱いたのだ。しかし、人だと思っていた彼は浅はかだった。

 懐中電灯を持って少年、田中太郎をノゼ起き込んでいるものは「狼」だった。

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書 〜乱雑に描く世界〜 @runrungenya

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