第7話 1月11日 2回目

僕は人生で2度目の11日を迎えた。

重苦しくのしかかる眠気なんて気にならないくらい、今日の朝日は輝いて見えた。

繰り返す日常が終わったわけではない。

どうせ今晩には寝てしまい、チョークを投げられて目を覚ますのだろう。

少しずつでも糸口を見いだせて行けたらそれでいい。

今の僕は、少しだけ前向きだった。


重たい身体を引きずりながら学校へ向かう。

渚とは家が近いので帰りは一緒だが、朝はそうもいかない。

彼女はかなり"朝に弱い"タイプの人間だからだ。


学校に到着、席に着いた僕はどっと眠気に襲われる。

前向きだった僕の脳みそも、眠気に苛まれる。

もう寝てしまってもいいだろうか。

今回やるべき事はもう果たしたんだ。

次の"10日"にまた色々試せばいいじゃないか。


「おはよ、拓海。」


始業ギリギリに来た彼女が僕の思考を遮る。


「ねえねえ、昨日いつもの帰り道辺りで事故があったらしいよ!私達カフェ行ってなかったら危なかったかもね!」


そういえば、渚のいる11日の景色は初めてだった。

そうか、こういうことになるのか。


「それは危なかったな。僕のおかげってことで」


眠気を振り払って得意げな顔をしてみる。


「悔しいけどそういうことになるね。拓海もしかして未来見えてた?」


「はは、バレたか」


冗談交じりで返す。

が、正解である。


「まあなんというか、、、ありがとね。拓海。」


照れくさそうな仕草を見せて言う。

こんな姿を見るのは初めてかもしれない。


「えっと、、、どうしたの?」


「いやあ、実際危なかったかもしれないし、誕生日祝ってくれたしね。お礼はしっかりするものでしょ。」


やっぱり照れくさそうな彼女は、それを誤魔化すようにニコッと笑って見せた。


そうか、そうか。

僕はこの笑顔を無くさないために10日を繰り返していたんだ。

同じ10日を繰り返すより、寝ずに日々を過ごせばこの呪縛から開放されるヒントを得られるかもしれない。

もしかすると、12日まで起きていればもう10日に戻ることは無いかもしれない。

なによりも、

今日初めて見た彼女の仕草のような、まだ知らない彼女を見ていたい。見足りない。


今日も朝まで起きていよう。

彼女の何気ない言葉と仕草が僕をそうさせた。

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