第5話 1月10日 3回目
チョークに打たれて僕は目を覚ました。
時計の針は真っ直ぐ上を指し、隣には机に突っ伏して寝ている渚がいる。
"また"だ。
僕は1月10日を繰り返している。
彼女の死を回避したら必然と11日の朝日を浴びれるものだと思っていた。
「ん、んん〜」
隣からあくびが聞こえた。どうやら彼女が目を覚ましたらしい。
「おふぁ...」
「渚!」
切なげな声で振り返らなかった"昨日"の彼女を思い出し、気づけば声にしてしまった。
急に呼ばれて目を丸くする彼女。
「こらうるさいぞ、拓海」
すかさずヤマ先がチョークを投げる。
クラスにくすくすとした笑いが響く。
精密なそのチョーク捌きをくらうのは本日二回目だ。
「すみません...」
「ふふっ。どうしたの?髪の毛真っ白になっちゃってるよ?それに急に私の名前叫んじゃったりして」
「いやこれは違って、ええと...」
呼んだは言いものの言葉に詰まる。
何からいえばいいのか。
「あのさ、俺必死でさ、訳わかんなくなってんだ。昨日は本当にごめん。」
頭にクエスチョンマークが浮かんで見えそうな表情をする彼女。
「えーっと、、、ごめん。なんの話?」
そうだ、そうだよな。順序が違った。
「渚、お誕生日おめでとう。」
本日二度目の驚いた顔を見せる彼女。
そしてその顔は僕の好きな笑顔へと変わっていった。
「ふふふ。ありがとう!でも普通こういうのって朝言うものだからね?」
不満気な台詞の割には彼女の顔はずっと笑顔だった。
放課後、"昨日"と同じ手段で事故は回避した。
そして帰路に着き、現状に対する不安を抱えながら寝床に着いた。
僕は1月11日を迎えられなかった。
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