第4話 1月10日 Continue

4時間目を終えてから放課後まで、夢で見ていたことが全て現実に起きた。

今僕は夢を見ているのか、解像度の高いデジャブなのか、はたまた予知夢だったのか。

釈然としないが、居なくなったはずの渚が隣を歩いていることだけは素直に嬉しかった。


「今日、なんか変だよ。拓海」


「ちょっとね、寝不足なんだよ」


「ふーん。授業中に泣き出しちゃうくらい?」


ニカッと彼女は笑いかける。

彼女の笑顔で忘れそうになるが、僕にはやるべき事がある。


それは"渚の死を回避する"こと。


僕が見た物がなんだったのかはまだ分からない。

けれど、渚をもうあんな目には合わせたくない。

させてたまるか。


「渚、今日こっちの道から帰らない?」


「別にいいけど。なんかあるの?」


「気分転換ってやつだよ、たまにはいいだろ」


「ふーん。やっぱり拓海今日変だね」


この後起こることを現実にさせない。

あの夢を見たからには僕はこうせざるを得ない。

いわば"使命"みたいなものだと考えている。


「拓海、ねえ拓海ってば!」


「ん、ごめん。ちょっと考え事してた」


「そっ。やっぱり今日おかしいよ。急に泣き出したり、上の空だったり」


僕の前を歩きだした彼女は振り返り、

いつもとは違って少し弱気で、でも不貞腐れた声色で言った。


「今日、私誕生日なんだけどな、、、」


そういえば、そうだったな。

正直目先のことで精一杯だった。


「じゃあ私こっちだからじゃあね」


そう言い残し彼女は帰路に着いた。

僕に背を向けて。



家に帰り今日のことを振り返ってみた。

彼女を祝ってやれなかった罪悪感もあったが、正直安心が勝っていた。

明日謝ればいい。

ひとまず彼女が無事でいてくれたことが僕にとっては1番大きかった。


その日は安心してぐっすり寝床に着いた。



「痛っ」

「おーい、寝るんじゃねえぞ。今が受験に向けて一番大事な時期だからな。」


僕はチョークに頭を打たれて目を覚ました。

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