第3話 1月11日 21:30
昨日、渚は死んだ。
トラックの運転手は脇見運転をしていたらしい。僕を見ていた渚はそれに気が付かなかった。
それは唐突な出来事で、その後のことはあまり覚えていない。
覚えているのは、昨日は眠れなかったこと。
教室の隣の席には花が添えられていたこと。今日のお通夜でクラスメイトが泣いていたこと。
そして僕だけが泣けなかったこと。
きっと僕は疲れているんだ。
そう言い聞かせ疲れと共にベットに倒れ込んた。
彼女のめでたい日を素直に祝いたかった。
彼女に想いを伝えたかった。
彼女の笑顔をまだ見続けていたかった。
それなのに、、、
何故泣けないのか考えるのも億劫な程に僕の頭は機能していなかった。
いつもよりも早い時間、その日僕はそのまま眠ってしまった。
「痛っ」
「おーい、寝るんじゃねえぞ。今が受験に向けて一番大事な時期だからな。」
時計は真っ直ぐ上を刺し、黒板には頭が痛くなるようなたくさんの数字が書き並べられてい
る。
そうか、今は4時間目。数学の時間?
どうやら僕は授業中に寝てしまったらしい。
今どき珍しくチョークを投げつけられて起きた僕は、ふと隣を見て思い出す。
そこにはもういないはずの渚がいた。
「ん、んん〜」
大きく伸びをして目を覚ます彼女、あくびをしながら僕の視線に気づく。
「おふぁよお」
「あぁ、、、あぁ、、っ...!おはよう!」
自身から出た情けない声に驚いた。
僕は泣いていた。
どうやら僕は悪い夢を見ていたようだ。
「拓海も寝てたの?嫌な夢でも見ちゃった?」
からかうようにニヤニヤしながら彼女は僕を見る。
「違うよ。ヤマ先のチョークが今日は鋭くってさ」
「ははっ、強がっちゃって」
満面の笑みで僕を見る彼女。
その笑顔を僕は何故か知っていた。
そう、夢で見たのだ。
脳裏に疑問が走った。
あの夢 は、、、
あの夢は本当に"夢"だったのか?
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