第2話 1月10日 放課後
帰り道はいつも渚と一緒だ。
家が近くて付き合いが長いから、ただそれだけ。
お互いの家までだいたい10分、のはずだが今日思いを伝えると決めた僕にはその時間が果てしなく感じた。
「友達から聞いたけど、またヤマ先にチョーク投げられたんだって?」
「逆に渚はなんで居眠りバレないんだよ」
「だって私ヤマ先に贔屓されてるもーん」
「自意識過剰だな」
「"自己肯定感高い"って言ってほしいなー」
くしゃっと僕を見ながら笑う。その笑顔は反則だ。
僕の家の屋根が見えてきた。果てしなく感じていた僕の時間はもうすぐ終わるらしい。
言わなきゃ。
寝癖は、、、ない。制服の襟も曲がってない。
靴は、、、
あ、靴紐が解けてる。こんなんじゃ締まらないよな。
緊張からか、普段気にしない身なりが気になって仕方がない。
「ちょっと待って、靴紐が、、、」
ええー、と躊躇いながら彼女は僕の前を歩く。
「拓海、それより言い忘れてる事ない?」
振り返って僕に問いかける彼女は少し不貞腐れているような顔をしている。
「え?」
"言い忘れている"こと?
たしかに僕は今日告白する。しかしそれを彼女は知らないはずだ。
じゃあなんだ?
緊張と焦りがどっと押し寄せてくる。
靴紐が結べない。
そもそも僕はなんで今日告白すると決めたんだろうか。
あ、そうか。
靴紐をぎゅっと結んで立ち上がる。
彼女の方を見て言った。
「渚!お誕生日おめでとう!」
そこには不満げで、でも嬉しさが滲み出た僕の大好きな人の顔があるはずだった。
目の前には電柱にぶつかってボロボロになったトラックと、血を流しながら倒れている彼女がいた。
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