忙しいのですよ

この世界の未亡人に祝福を! 其の一


 『解析』によると、

 

 この世界における『S』とは女同士の愛人関係……

 女性過多の世界で起こる女同士の契約恋愛関係の事である。

 この場合、私的な愛人と公的な愛人に分かれる。


 公的な愛人とは、法律上、認められる関係で、次のように定義されている。


 夫の正妻は妾と愛欲関係となるのは当然。

 なぜなら女性のほうが性欲が強く、貞淑を求めるとき、その性欲のはけ口として女性に対して許容されている。


 また、一度婚姻関係を夫と成立させた以上、夫からの離縁状がないと、再婚は不可の世界としては、未亡人対策が必要となる。

 特に女性の性欲が増大する三十代となれば、風紀の紊乱を防止する観点から、良家の正妻が宣言すれば、対象の女を愛人と認定できる。


 ただし、この場合、愛人となる女を正妻は購入する形、永年奉公という形をとり、正妻は愛人となる女の実家へ対価を支払う。

 この購入する対価は夫となる者の財産を使用してはならない。


 正妻の愛人は正妻にだけ全てを捧げなければならない、正妻は夫から離縁されたとしても、愛人に対しては永久に責任を伴う。


 愛人は正妻に対して肉体関係を持つので、正妻の愛人と夫とは肉体関係は成立しないとする。

 ただ正妻が愛人を妾として推薦すれば、これ以降は妾として扱われる。

 もし正妻の夫と正妻の愛人が肉体関係を持ち、子をもうけたとしても、私生児扱い、認知は不可となる。


 良家の正妻というカテゴリーには階級があり、貴族階級では許嫁が含まれ、さらに特例として、『王女』となれば夫が未定としても、将来夫を持つ者として扱われる関係上、愛人を持てる。

 『王女』の愛人には階級があるが、説明は別途に譲る。


 私的な愛人とは、個人の責任で行う行為で、なんら法的に認められない、社会的に『S』と呼ばれるのは公的な愛人の事である。


 はぁ?

 これは確実の神の思惑ではないのですかね……本当に、このような社会慣習なの?


 世間では男が死んだりしたら、悲劇と云われているが、そのとおり、これは大変なことです。

 離縁状がない以上、未亡人は婚家に永久に縛られるか、どこかの正妻の愛人に収まるしかない……


 しかも夫の財産に手を付けてはならないとある以上、そんな永年奉公のお金など、持っている妻はほとんどいない……


 未亡人は万に一つでも浮気などして、子供が出来れば、その子はどのような理由でも私生児扱い……


 これだけは何とかしなくては……


 未亡人の自立の道を切り開かねばならない、たとえ道が険しいとしても、一人で生きていける道を……

 神様が望まれたとしても、これだけは何とかしなくては……


「文子様の件、私は了承しました、ただしいくつか条件があります」

「条件とは?」


「これは皇帝陛下と皇后様にお力を願わなければなりません、この場では言えません、皇太后様、そういうことで、明日、私の方からお伺いいたしますので、面談をしていただけるように、お願いできませんか?」

「それは雪乃さんの、もう一つの名前での面会と考えて良いのですね」

「大変無作法で恐縮ですが、お口沿いをお願いします」


「明日、私は学校を休みますので、時間がとれましたらお知らせください」

 私、いまものすごく険しい顔でしょうね……

 自分でもわかります、聖女のオーラ全開ですから。


 こうして脇坂様の奥様と皇太后様はお帰りになり、私は文子様の件を洋子様にお話ししました。

 その後、私は考え事をするといって、部屋に引きこもったのです。


 翌日、皇帝陛下からの差し回しの馬車が来ました。

 

 怖い顔で私は馬車に乗り込み、陛下の私的な部屋に案内されました。

「皇帝陛下に置かれましては」

「よい、聖女のご用件を伺おう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る