この世界の未亡人に祝福を! 其の二


 部屋には皇帝陛下と皇后陛下、皇太后様、そして皇太子殿下がおられました。


「皇帝陛下のお許しを得ましたので、私のお願いを口に出させていただきます」

 私は申し上げました。

 文子様の例をとり、若くして未亡人になったものは婚家に仕えるか、どこかの正妻の愛人になるしかない現状、それを何とかしたい、ご協力をお願いしました。

 

「要旨は理解した、しかし、どうするというのだ」


 私の案は、本人が望めば未亡人は婚家と縁を切ることが出来る、というものです。


「しかし、法的に明示しても、生活の糧を得られるために、今までの通りとなるのではないか?」


 そう、そこなのです!


「覚悟のない女はそれもよろしいかと思います、しかしなんとか女子に手に職をつける無料の学校を、そして学問の再教育の手段を!」


 そして、まず帝国医療施設の看護学校の設立と、軍の後方支援として、戦闘に関係ない事務や後方の医療機関を未亡人を含めた女性への解放、をお願いしたのです。


「軍の事務か……たしかに、その人員を戦闘職に回せば、軍の戦力は向上するが……やはり予算が増大する、そのあたりは考えておられるのか?」

「後方勤務の給料を下げればいかがでしょうか、命を懸けないのですから、減給しても理屈は通ると考えます」


「どのぐらいが適当か?」

 皇太子様、乗ってこられました。

「半分は酷ですので、まぁ七割、そして女性の昇進は佐官どまり……」

「七割か……六割五分でも応募はあるだろうな……」


「陛下、私はこの雪乃王女の提案は考慮すべきと思います」

 皇太子様が賛成してくれました。

 

 あとは教育の充実です。

「女が多く生まれるこの世界、なんとか優秀な才媛を世に出す手助けすれば、帝国は繁栄するのではと考えるのです」.


「国家の繁栄とは産業の振興が第一、そして農業がその振興を支えるのではないでしょうか」

「私は皆様がご存知の通り『聖女』というものです、そして少なくとも効率的な稲作については存じております」


 湛水直播栽培(たんすいちょくはんさいばい)――ウィキペディアより――というもので、ネットにその方法が書いてありました。

 私、徹夜でこれを書き写したのです、図や動画も必死で書き写し、提供したのです。


 幸い、この国には灯油発動機なるものはあります、これを改良して、畦畔からの動散なんてのも提案しました。


「これなら味は多少落ちるかもしれませんが、人手がかなり減るので、コストは削減できるでしょう、そしてこの国はいまだ未開の開拓可能な土地が、北のほうに残っています、空いた人員でこの耕地で栽培可能な作物ならば増産可能です」


 寒冷地の作物とは大麦やジャガイモのことです、樺太あたりでも大麦、ジャガイモは栽培可能なのです。

 ライ麦も解析の結果、可能となっていましたので、ライ麦パン、つまり黒パンなどもお勧めですね。

 だからビール産業と黒パンとジャガイモ料理の普及を提案しました。

 これでソーセージでもあればドイツ料理ですね、そうそうキャベツも可能なので、ザワークラフトもいいですね。


「この寒冷地での作物でも、パンなどの主食が可能です、大麦なら家畜の餌にもなるでしょうから、牧畜業も視野にはいるでしょう」


 これも提案書を提出しました。


 とにかく、必死で訴え、聖女の知識も提出することを条件に、皇帝陛下の裁可を取ったのです。

 あとは個人の努力次第ですね。


 色々議論しましたが、私の意見は採用されました。

 そして謝意を表し、私は退出したのです。

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