華族高等女学校の『春のバザー』 其の三

★華族高等女学校の『春のバザー』 其の三


「『帝国第一高女』の私たちが手伝っても良いのでしたら、お手伝いしましょうか?」

「手伝って下さるの?誰か、生徒会に『帝国第一高女』のお友達に、お手伝いを頼んでも良いか聞いてきてくれる!」

 

 直ぐに高等女学校の生徒ならいい、との返事をもらい、この柔らかくてどうしようもないご飯から、売り物を作り出すことにしたのです。

 ご飯でお好み焼きを作ることにしました。


 柔らかくてどうしようもないご飯と、文子様が下手に潰した白ご飯を混ぜ、小麦粉を投入、少し固くします。

 卵、ネギと干しエビが調達出来たので、それを放り込み、醤油、みりん、鰹だしで味付けし、フライパンで焼きます。

 裏表を焼き、切り分け、醤油を塗りつけ、好みで七味唐辛子を振って提供しました。

 これはお父様方に特に受けたようです。


 試食してみると、案外に美味しい!

 五平餅はやめ、この『ご飯でお好み焼き』を大量に作り始めます。

 無料の試食をあちこちにばらまいた結果、お客様がドンドンと……


 二時頃には文子様達のお店も軌道に乗り、私たちはお暇をすることに……


「雪乃さん、このお礼は必ずいたします!」

 なんて文子様がおっしゃっていましたね。


「お姉様、素敵ですわ♪」

 小百合さん、お手伝いなんてしていて、今までおられたのですね。

 

「こんど、お家に伺っていいですか?」

「いつでもいいわよ、歓迎するわ、洋子様、いいかしら?」

「歓迎しますわ」


 嬉しそうに小百合さんは帰って行きました。


「やれやれ、疲れましたね……」

「そうですね……」

「帰ったらさくらんばのチーズタルトがありますから、皆で食べましょうね」

「えっ、もう一つ作っていたのですか?」

「なにか勢いで……」


 洋子様が、

「そうですわね、今日は日曜日、メイドさんもお休み、誰も家の中にはおられませんし……晩ご飯は、文子様のお店の商品がいっぱいありますしね」

 そうなのです、『ご飯お好み焼き』を、文子様が大量にくれたのです。


 でも洋子様、くすくすと笑いました。

「どうしたのですか?」

「いえ、文子様も小百合さんも、華族女学校関係の生徒でしょう?雪乃様の事、最後の最後まで『王女』と気がつかれなかったなと思って」

「そういえばそうですね」

 私も笑ってしまったのです。  


 でも日曜の夕刻にお客様がやってこられたのです。

 皇太后様と脇坂様のお母様です。


「突然、ごめんなさいね、また文子が面倒をかけたと聞いたわ、あの子はじゃじゃ馬で困っているの」

 なぜ皇太后様が……


「文子は妹の孫なのよ」

 ということは脇坂文子さんは皇太后様の大姪(おおめい)ということなのですね。


「でね、文子はね、出戻りになるの」

 そんなこと、なぜ私に?


「私から言うわ、文子は私の娘で、ある方の許嫁だったの、でも、流行病でぽっくりと……」

 文子様のお母さまがおっしゃったのです。


 たしか離縁状がなければ再婚は出来なかったような……女は夫を裏切れない……一生、再婚は出来ないということ……

 これは許嫁にも適用されるような……


「でね、文子は男と再婚は出来ない身の上なの」


 これ、何となくまずい気がします……いよいよ変態神様の面目躍如、神様は『爛れたレズ』の痴態をお望み……


「このような身の上の女になると、Sしかないのよ」


 『S』……初めてこの言葉を真剣に解析しました……

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