お弁当の効果は絶大ですね♪


 そんな話をしている時に、

「お兄様、どこで油を売っているの?あら、いやだ、親王殿下……こちらは?」

 あわてて神津様が耳打ちしています。


「ご無礼しました!私は神津小百合、華族高等女学校附属尋常女子小学校五年です!」

「小百合さんというのね、可愛らしい妹様ね♪」


「ちょうどお昼にしようとしていたところなの、お弁当なら予備があるわ、食べませんか?」

「えっ、いいの」


 で、洋風バスケットを渡します。


 結局わいわいとお昼を食べます。


「ねぇ、お姉様方」

「なにかしら?」

「こんど華族高等女学校で『春のバザー』があるの、雪乃様も洋子様も、ご一緒にいかがですか?」

「いいの?」

「お兄様なんかより、皆さまとご一緒のほうがよほどいいわ!」

「小百合!」


 親王殿下が大笑いして、

「華族高等女学校での『春のバザー』は有名ですよ、でも皆さんが行くのは少しばかり心配ですね……」

「そうですね……あそこはSで有名ですから……小百合も染まっていますからね……」


「ひどいわ!美しいお姉様にあこがれるのは当然でしょう!ご自分がモテないのを、ひがんでいるのですか?」

「でも、お兄様、ご安心なさい、親王殿下でも、美しい方が二人も応援に来て下さるのですから!」


 脇坂様が、こらえきれずに吹き出したのです。

 親王殿下は、なんともいえない顔をされています。


 華族高等女学校の『春のバザー』も日曜日に行われるそうで、こちらは来週だそうです。


 親王殿下が、

「神津のために、この可愛い妹さんの付き添いをお願い出来ませんか?」


「殿下が云われるのなら……」

「嬉しい、ではお待ちしています♪」


 二人で帝都を散策しながら、お伺いすることにしました。

 だってね、私、まだ一度も路面電車に乗ったことがないのです!

 いい機会ですから……


 食事も終わり、親王殿下は学生の集団にお戻りになり、小百合さんも神津様に連れられご家族の元へ……

 小百合さんに、お土産として持ってきたクッキーをいっぱいあげたのですよ。

 嬉しそうにされていました。


 帰ろうとするとき、親王殿下と脇坂様が走ってきて、

「申し訳ないが、お作りになられたお弁当、まだ一つあったと思うが、いただけないか?」

「構いませんが?」


「助かります、実は脇坂の姉上が、貴女のお弁当を見てみたいとおっしゃって……」

「すいません、あまりに先ほどのお弁当が美味しくて、姉に親王殿下のお知り合いの方がお作りになってのに、姉上のものは美味しく無いなんて口を滑らせて……」

「それはお怒りになられるのは、仕方無いではありませんか、私でなくても女なら怒りますよ!」


 まったく脇坂様はデリカシーがないこと!


「そうですわ、まだクッキーが少し残っていますから、これもいかがですか?」

「ありがとうございます!」


 あれ、脇坂様、走って行きました。


「脇坂は姉上に頭が上がらないのですよ、でも私も急ぎますので、これで失礼します、今日はありがとう……」

 満更でもない顔で、親王殿下も走って行かれました。

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