当然なの?


 で、やっと帰宅……今日は朝比奈邸にお泊まりです……

 慶子様がそわそわして待っておられました。


「雪乃さん、顔合わせはどうでしたか?」

「どちらがいいと聞かれましたので、親王殿下がいいと答えました」


「親王殿下を選んだの?」

「はい」

「そう……堅実と言えば堅実ね……雪乃さんらしいわ……」


「あの……お聞きしたいことが……」

「なにかしら?」


「……皇后陛下より、その……裏切らない証を示してくれないかと……」


「ああ、そのことね……『王女』ですものね、40年ぶりかしらね、でも実際は婚約と思って良いわよ、『王女』というものは、皇子のために帝室が唾をつけている、という意味だから」


「でも、婚約よりは良いかもね」

「なぜです?」

「婚約とはね、未来の夫に対する覚悟を示すということよ、婚家のお姑様の前で、未来の夫の『ナニ』に口づけするのよ、私もしたわよ、とても恥ずかしかったけどね、その後ね、お尻も差し出すのよ」

「えっ、慶子様も?」

「ええ、久光様ってね、その時、私の口に出したのよ、酷いと思わない?」

「だす?」

「白い物よ」


「えっっ」


「その後、お尻にね、痛かったわ」


 よく聞くと、『ナニ』に口づけというのは、求愛を受け入れるという意味で、婚約の前には当然済ませておくことらしいのです。

 改めて婚約の儀式の前に『ナニ』に口づけというのは、お尻にですね……受け入れやすく……なんですか、この仕来りは!


「お友達も一緒に妾として、私が選んだ夫に傅くと云われるのですが……」

「皇后様はなにかおっしゃった?」

「『妾の事だけど、構わないわよ』とだけ」

「皇后様、物凄く譲歩してくださったわね、有難く思うことね」


 ?


「お友達は妾としてあつかうなら、妾契約の証が最低必要なのよ」

「契約の証?」

「契約の証とはね、婚約と同じで、裸になってお尻を差し出すのよ」


「えっっ、お尻を!」

「当然よ、妾だもの」


「では今回は……」

「お友達が妾契約も貴女の意思に従うことを認める、という意思表示よ、『S』を認めるということよ」


「そうなのですか……」


「で、いつ発表するって?」

「来週だけど、明日にも……」

「よほど雪乃さんを取り込みたいのね……まぁ当然よね、聖女ですものね」


 この後、私たちのお家の話が出て、私たちが寮を退寮すると同時に、慶子様と久光お兄様のご結婚式が行われることになっていると、聞かされました。

 帝室一族の降嫁ということで、朝比奈伯爵家は昇爵、つまり侯爵となるのですね……

 私は侯爵家の娘となり、皇帝陛下の養女、『王女』として、恥ずかしくない実家となる手筈です。


 まったく、恐ろしい手並み……なんでも皇帝陛下と皇后様がお決めになったようです。 


 日曜日、寮に戻ると、洋子様も戻っていました。

「お使いがこられ、お聞きしましたよ、皇子様方は雪乃様をお気に召されたとか?雪乃様はどちらの方を?」

「その……親王殿下が……お優しそうで、大事にしてくれそうで……」


「私は雪乃様がどちらかの皇子様を選ばれたら、当然、妾の儀式はあると覚悟していたのです、お母さまに聞くと、なんでもお尻も差し出すとか……痛そうなので聞くと、ワセリンを塗りなさいと教えられたのですよ」


 洋子様、物凄いことをおっしゃいます。

 ワセリンですよ!ワセリン!あんなものを塗ってお尻を……


「婚約したら、許嫁としては、儀式をするのでしょう……私……殿方のアレって、見たこともないし……お尻もでしょう……」

「雪乃様、お兄様はおられるのでしょう、チラッとぐらい見えるのでは?」

「私、孤児院で育ったでしょう、男の方は理事長先生しかいなかったし……尋常小学校は女子クラスでしたし……」

 尋常小学校って男女共学が建前ですが、女子が多いこの世界、どこの小学校でも女子だけのクラスが出来てしまうのです……


 不思議にも私は六年間、女子クラスに通ったと記憶にあります……

 どうも神様のご配慮による過去のようですね。

 そりゃあそうです、だって私の転生前の出来事ですからね。


 この後、散々に女子トークに花が咲き、そして翌日、午前中に洋子様と一緒に呼び出され……念をおされました。


「雪乃さん、洋子さんも、女学校を卒業したら、必ず輿入れしてね」

「二人でともに、必ず皇太子殿下か親王殿下に必ず嫁ぎます」

  

 なにかほっとした顔の皇后様と皇太后様でした。

 

 午後……私が『王女』になることが発表されました。

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