第9話 世話好きな漁師

 船乗り場で、船が運航できない理由を知ったカイルとタイロン。

 2人で話をしている。


「まさか、剣がこんな所まで影響を及ぼしているとは思わなかったな……」


「そうだね。それに加えて、少なからず僕たちにも関係があることが分かったしね。」


「だが、俺たちが船をどうこう出来るわけでもねぇしな!」


「そうだね。この剣を王国に届けることで、元の状態に戻ってくれれば良いんだけど。」


 何の力にもなれないもどかしさを感じながらも、メレンポッドのことを心配に思う2人であった。


「これから、どうする? 町をうろついてみるか?」


「他にも困っている人がいるかもしれないし、何か問題を抱えている人もいるかもしれないから…… うん、うろついてみよう!」


 カイルとタイロンは、町を散策することにした。

 改めて見ると、穏やかな海だ。船の乗り降りにも、うってつけなのだろう。

 何隻もの船があって、大型の客船から小型の漁船まで様々な大きさの船が見受けられる。


 すると、1隻の漁船が目に入った。

 

「すみません! そこで、何をされているのですか?」


 そこには、男の姿があった。カイルがおもわず男に尋ねる。


「何をって…… 見て分からないのか? 船のメンテナンスをしてるんだよ!」


「すみません。そういうことではなくてで…… 今は、船の運航は難しいと聞いたのですが、どうして船の整備をされているのですか?」


「あぁ俺は、許可証を持っているからな! 魚を捕って、店に届けるのが俺の仕事だ。 他にも、理由がある者達が許可証を貰って、出航しているみたいだがよ! まぁ、動かせなくても手入れはするつもりだかな……」


「そういうことだったんですね。」


 どうやら、許可証は生活に必要な漁師などにも出しているらしい。

 ということは、明確な理由がある者はそこまでの影響は出ていないのかもしれない。


「それより、お前たちここの魚は食べたか?」


「まだ、食べてないんです……」


「せっかくここまで来たなら、食べていかないと駄目だろ! よし、分かった。俺がとっておきの店を紹介してやる! もちろん、俺の奢りだ。」


「いえ、さすがに会ったばかりの方にそこまでしていただくのは、さすがに申し訳が……」


 カイルが最後まで話す前に、漁師の男は歩き出してしまった。

 どんどん先に歩いていくため、見失う前についていく。


「大丈夫なのか? あの人について行って?」


「うーん どうだろう…… でも、ここまでしてもらって、勝手に帰るのは嫌だな!」


「カイルは、優しいよな! 分かった…… ついていこう。」


 タイロンが不思議そうに呟く。

 カイルの性格からして、このまま帰るという選択肢はないようだ。


 歩いて店までたどり着く。


「ここだ! さぁ店に入って!」


 漁師の男は嬉しそうに話す。

 男に続いて、2人は店に入った。


「よぉ大将! 開いているか? 良ければ、この2人に魚を食べさせてやりたいんだが?」


「はい、開いております…… どうぞお座りください……」


 漁師の男と、2人は席に座る。

 大将と呼ばれている店の主人は、活気のある姿を想像していたが、想像していたよりも寡黙なイメージを抱くものであった。


 注文をする。

 とはいったものの、2人はよく分からないので店のおまかせにする。

 なぜだか、漁師の男が誇らしげな顔をしていたのだが、それに目もくれずカイルとタイロンは食べ続けた。


 出てきた料理は、どれも素晴らしいものだった。味はもちろん、見た目も考えられていた。

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