第61話 夢を乗せて、もう一度
「ミツバちゃん、今度は私のこと忘れないでね」
「それは、私達次第だよ」
二人、少し表情固く笑いあう。少し緊張しているのか、サクラの手が震えている
「そうだね……。もし覚えていたら、お菓子また一緒に食べようね。私たくさん作って待ってるから」
「うん。楽しみにしてるね」
ミツバが微笑みそう話すと、サクラも一緒になって微笑む。二人見つめあうと、サクラがふぅ。と深呼吸をした。すると、サクラの周りに浮かぶ本が慌ただしくサクラの周りを動き周るとサクラとミツバ、二人の間に集まった大量の本。それを見て目を閉じたミツバと、本に向かって唱えはじめたサクラ。しばらくすると本が光に包まれて大きな剣に変わっていった。その剣を見て、ゆっくりと近づいていくミツバ。恐る恐る剣を手に取ると、その姿をニコッと笑って見ていたサクラに気づいて、剣を片手にサクラに近づいていく
「そっか……あの日、夢で見た剣を振り下ろしていたのは、サクラじゃなくて、私だったんだ……」
そう呟くミツバに頷いて微笑むサクラ。ミツバの後ろからアルノが持ってきた本が次々と二人の周りを囲んでいく
「二人とも!」
サクラが魔術で大きな剣を出した時、初めて見る二人の行動にうろたえ戸惑い叫ぶナツメと怯えるユリとツバキ。その一方、ニコニコと笑って見ているアルノに気づいたナツメが、アルノに駆け寄って叫んだ
「アルノさん!助けなくていいの?」
「二人がそうしたいって言うんだから、仕方ないのよ」
戸惑う様子もなく笑って答えるアルノに更に戸惑うナツメ。不安そうに話を聞いていたユリとツバキがナツメの側に恐る恐る寄っていく
「それより、三人も少し手伝ってくれないかしら?」
突然手伝いを言い出したアルノにナツメ達が嫌な予感を感じて、三人とも少し後退りした
「私達とあの子達だけでは叶わないのよ。お願い」
「……アルノさんが言うなら」
と返事をしながらユリとツバキの方に振り向くナツメ。目が合い雰囲気に押されて頷いてしまったユリとツバキ。三人の返事を聞いて、アルノが嬉しそうに手をパンっと叩いた
「でも、どんな願いを叶えようとしているんですか?」
「まあそれは後で、それより、ナツメちゃんはサクラの側に、ユリちゃんとツバキちゃんは、ミツバちゃんの側に行って。ほらほら」
答えをはぐらかして、グイグイとナツメの背中を押して急かすアルノ。まだ心の準備が出来てないユリとツバキも、アルノに急かされて、ミツバの側に駆け寄っていく。三人の後ろ姿を見届けると、側にいた家政婦達にアルノがニコッと微笑んだ
「では、私達も頑張ってみましょうか。ミツバちゃんの本は、私がどうにかするから」
「……お二人の願いなら仕方ありませんね。ミツバ様のためでもありますから」
呆れたようにため息をつきながら答えると、アルノから離れてく家政婦達。その後ろ姿を見届けるとうーんと、大きく背伸びをしたアルノ。重そうに剣を持ちサクラを見つめるミツバを見て、クスッと笑った
「それじゃあ、私の夢も乗せて、二人の思いのお手伝いをしましょうか……」
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