第37話 強い力を持っているなら

「……ただいま」

 疲れた顔をして、家の玄関を開けたミツバ。はぁ。とため息つきながら、リビングに入ると、ソファーで寝そべりながら、一人暇そうに携帯をいじるホノカがいた

「お姉ちゃん、おかえりー」

 携帯をいじったまま、ミツバの顔を見ずに声をかけたホノカ。その声を聞きながら重たい足取りでキッチンに向かってく

「ホノカ。お土産あるよ」

 と、テーブルに荷物を置きながらホノカを呼ぶと、ソファーから飛び起きてドタバタと足音をたてて、嬉しそうな表情で、ミツバのところに駆け寄ってきた

「お土産なに?」

「サクラさんからホノカにって……」

「えー!やった!サクラさんのケーキ美味しいんだよね!」

 テーブルに置いたケーキの入った袋を受けとると、すぐ開けてケーキを見つめるホノカ。美味しそうなケーキを見て、大急ぎで食器を用意しはじめた

「ホノカ、いつ会ったっけ?」

「んー。いつだったかなあ?もう、大分前だった気がするけど、それより全部食べていい?」

「いいけどさ。私、部屋で休むから、起こさないでよ」

「わかったー」

 カチャカチャと食器の音を鳴らして、ケーキを持ってリビングに向かっていくホノカを見て、ふぅ。とため息つきながら部屋へと歩いていくミツバ。部屋に入るなり、ベッドに勢いよく倒れた


「サヤカとマホから連絡来てたんだ……」

 鞄から携帯を取り出して二人に返事を返すと、投げるように布団の上に携帯を置いて、うーんと背伸びをした

「ケーキ食べすぎた……」

 お腹をさすり体を横にして目をつぶる。だが、すぐに目を開けて、ベッドの側に投げるように置いたカバンから本を取り出した

「あの本、どこで見たんだろう……」

 パラパラとページをめくりながら、はぁ。とため息ついて、本も携帯のそばに投げて置いた

「確かサクラさんと……」

 と、呟いた時、目の前がグルグルと目眩が起きて、ぎゅっと強く目を閉じた。しばらく目を閉じて、うっすらと目を開けてもまだ治らない目眩に、目をつぶったまま、布団に入ると、目眩を治そうとそのまま、眠ってしまった



「ミツバちゃん、後悔はないの?」

「ないよ!サクラだけじゃなく、ユリ達の力になってるんだもん。後悔なんてあるわけないよ」

 不安そうに話すサクラに明るく返事をするミツバ。本を片手に、夕暮れの街の中を、二人並んで歩いている

「でも、もう少し私の力があればなって思うけど……」

「ミツバちゃんは十分強いよ。たぶん私なんかよりも」

「あのね、サクラ……」

 サクラの話を止めて、ヒソヒソと耳元で、話をするミツバ。ヒソヒソ話を聞いて、驚き勢いよく顔を横に振るサクラ。また不安そうな顔でうつ向くサクラを、ミツバが両手をつかんでニコッと微笑んだ

「大丈夫。私達ならきっとできるよ。だから、一緒に本をたくさん書こう」

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