第38話 これからのためにも

「あら、サクラ」

 ミツバを家に送った後、アルノの家に立ち寄ったサクラ。突然、部屋にやって来たサクラを見て、アルノが嬉しそうに抱きしめた。だが、抱きしめれてもサクラはどこか浮かない表情。それに気づいたアルノがサクラを癒すように優しく頭を撫でて微笑んだ

「急に、どうしたの?ミツバちゃん達も一緒?」

「ううん。私一人だけど……」

「あらそう……。今日はどんな用事?」

 ミツバだけでなくユリ達の姿が見れず、アルノが少ししょんぼりしている


「ちょっと荷物を取りに……」

「ユリちゃん達の本ね」

 おなじく、すこししょんぼりとうつ向いているサクラに、アルノが問いかけると、それに答えるように、サクラが小さく頷いた

「ミツバちゃんもそうだけど、三人にもあまり無理はしないように、言っておいてね」

「……わかった。伝えておくよ」

 そうアルノに返事をすると、少しうつ向いたまま自分の部屋の方へと歩いていくサクラ。その後ろ姿を見届けて、ふぅ。とため息ついたアルノ

「私が巻き込んだことでもあるけど……」

 ふぅ。とため息つきながら、床に散らばっている本を避けながら、部屋の奥にある本棚へと歩いていく

「本に抗おうとしても無駄だといつ分かるのかしら」

 本棚から一冊取り出して、パラッとめくると、床に落ちていた一冊の本が、アルノの横にふわりと浮いた。その本を取った時、コンコンと扉の叩く音が聞こえてきた


「アルノ様、今日はどうされますか?」

 家政婦が部屋に入りアルノに声をかける。声に気づいたアルノ。少し振り返ると、本をパタンと閉じて本棚に戻しながら返事をした

「止めておくわ。みんなも夕御飯まで少し休んでね」

「……はい。失礼します」

 アルノにペコリとお辞儀をして静かに部屋の扉を閉めた家政婦。パタンと扉が閉じた音が聞こえると険しい表情になったアルノ。本棚にある本にまた、そっと触れた

「そうね、無駄だったものね」

 とアルノがポツリと呟くと床に散らばった本達が、アルノを囲うようにふわりと浮きはじめた

「ここにある本達もきっと、サクラと同じ思い……」

 周りに浮かぶ本から一冊取って、本をめくる。たくさん文字が書かれたその本を数ページ読むと本棚に戻して、側にある本にそっと触れた

「でも、ミツバちゃんは本を持って帰ってきた」

 ふわりと浮かぶ本と一緒に、部屋の窓辺の方へと歩いていく。暗くなっていく空を見て、ほんの少し唇を噛み締め、また一人呟いた

「これから、どうなるのかしらね……」

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