第32話 変わらないように忘れないように
「ミツバもだいぶこの家に慣れてきたんじゃない?」
「……そうかな?まだ緊張しているけど……」
翌日の朝、お茶を飲みながらナツメと話すミツバ。昨日よりも、のんびりと会話を楽しんでいる
「今日は学校行かないの?」
「うん。今日は休日だから、大丈夫だよ」
と、ツバキとも話しているとパタパタと足音が聞こえてきて、リビングの扉が勢いよく開いた
「ミツバちゃん、おまたせ!」
ご機嫌で大きなケーキを持ってきたサクラ。後ろからユリも同じく両手が塞がるほどの大きなケーキを持ってリビングに入ってきた。テーブルに置いて追加のお菓子もキッチンから持ってくるサクラとユリ。テーブルいっぱいに置かれたケーキとお菓子に、少し困惑気味のミツバを横目に隣でツバキのテンションが上がっている
「凄いたくさん……」
「久しぶりに食べてもらえるから、嬉しくて。余ったものは、ホノカちゃんに持っていってね」
ニコニコと笑顔が止まらないサクラ。ケーキを切り分けながら話した内容にミツバが首をかしげた
「ホノカに会ったことあるの?」
「うん、何度か会ったことあるよ」
驚きつつも何となく納得していると、ケーキが待ちきれないツバキがサクラの腕を引っ張った
「サクラ、早く食べよう」
ツバキに急かされ、慌てて取り分けたケーキを渡していくサクラ。渡されたケーキを一口食べたミツバを見て、笑顔止まらないサクラ。ツバキにも渡したりと、のんびりとした時間が過ぎていく
「ミツバちゃん、美味しい?」
「うん。とても美味しいよ」
「そうだよ。気に入ってもらえてよかった」
ミツバの言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろすサクラ。だが、ミツバはケーキを見つめて、少し悩んでいる
「とても美味しいんだけど……」
頬張りながら呟いた言葉に、楽しそうだったサクラの表情が少しずつ曇っていく
「いつもケーキには、チョコが入ってたような……」
と、ポツリと呟いた言葉に、サクラ達が言葉を紡ぐ。ツバキもケーキを食べていた手を止めて、ナツメやユリの顔をキョロキョロと見渡している
「どうしたの?」
「ミツバちゃんの言う通り、いつもチョコを入れてたんだけど、昨日食べちゃって、買い忘れてそれで……」
ミツバにそう話ながら、うつ向いていくサクラを不思議そうにミツバが見ていると、二人を見てたナツメが大きくため息をついて、サクラがケーキを分けて盛られたお皿を取った
「これ、売られているのじゃなくて、サクラがよく作るケーキ」
と言うと、サクラのケーキを食べはじめたナツメ。ツバキも一緒に食べ進めている側では、ミツバがサクラを見て困った顔をしていた。それに気づいたサクラ。うつむいていた顔を上げ、笑ってミツバにケーキを追加でお皿に盛ると、自分の分のお皿を持ってミツバに微笑んだ
「早く食べよう!話は後で、ねっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます