第52話 過去と向き合う

 ガトーは話しを続ける。


 「私はあの子達を愛しています。3人とも良い子に育った・・・早くに母を亡くしどうなるか心配したが・・・」


 「うん、使用人のお陰だね。」


 「・・・それを今、言いますか・・・」


 「えぇ・・・違うの?」


 「・・・違いませんが・・・そこは、男で一つで頑張ったって言うとこでしょ・・・」


 「・・・うん、頑張ったな・・・」


 「心がこもってませんよ・・・まぁ、いいでしょう・・・ただ・・・気がかりなのは、一番下の子シフォンの事だ・・・」


 「・・・・・・・・・」


 「今回の一件であの子は自身の力と向き合う事になった・・・だがそれが、あの子の記憶を呼び起こそうとしている・・・」


 「それはそれで良いんじゃないかな・・・過去と向き合うって事は・・・」


 「過去を向き合うと言う事は当然、あの事を思い出させる事になる。幼き頃のあの子の記憶を封じた事は間違っていたとは思わないが・・・今、あの子が記憶を取り戻す事が良い事なのかは、正直、私にはわからない。」


 「力を使おうとして、取り乱したところを見ると・・・まだ早いのかもね。」


 「あの子は自分より強いものに立ち向かおうとしている。でも、今のままではあの子は・・・」


 「うん、死んじゃうねこのままでは・・・」


 「・・・私はあの子の傷つき倒れる姿を見たくないし、そうはさせない。だから、私はあの子の重荷を取り払いたいのです。」


 「そっか・・・だったら私には関係ないな・・・当主が真実を話せばすむ話しじゃないか。」


 「それがそうもいかないのですよ。」


 「はて、何でまたそうなる。」


 「あの時・・・もう一人、重荷を背負った方がいます・・・あの子を救う為にくだらぬ戯言を言った方が・・・」


 「・・・何が言いたいんだ?」


 「私はその方の事も同時に何とかしたいと考えているのです。その方に残された時間が少ないのなら尚更・・・その方をこのまま送りだす訳にはいかないのです・・・私は恩知らずにはなりたくないのですよ。」


 「良くわからないね・・・私は何もしてないし。」


 「あなたがあの子に恨まれたまま逝かれては困るのです・・・申し訳がたたない・・・」


 「やれやれ・・・どうしてそうなる・・・」


 「愛する妻にです。」


 「・・・それ・・・卑怯じゃね・・・亡くなわれた人を引き合いに出すのは・・・」


 「こうでも言わないとあなたは引き受けて下さらないのでしょう。」


 「残念・・・そう言われても引き受けられないよ。彼女が私の望む力を見せてくれていたなら話しは別だったんだけどね。」


 「だからこそ、あの子の重荷を取り払い、本来の力を取り戻せば、あなたが望む力を見れるかもしれないでしょう。」


 「かもしれないでは、困るんだよね。徒労に終わる事が今の私には一番の痛手なんだよ。」


 「・・・では何故、あなたはこの国に来たのですか?あなたは見に来たのではないのですか・・・シフォンの可能性を・・・私は信じていますあの子の可能性を!一緒に信じませんかあの子の事を。」


 「何でそこまで信じられる?」


 「何せ私は・・・『親バカ』ですからね。」


 「・・・そもそも、私があの子の重荷を取る事はできないと思うぜ・・・嫌われてるし、私の話しなど聞く耳持たないだろし。」


 「手助けはできるのでしょ・・・今まであなたがしてきた様に・・・」


 「はぁ・・・私のできる事なんて、くだらない茶々を入れるくらいなもんだぜ・・・」


 「それは私にはできない事ですよ。何卒、あの子と旅をしてやって下さい。そうすれば、あの子にも真実が見えてくるはずです。」


 「その真実って奴が見えてくる前に、私が居なくなるって事も考慮に入れて欲しいものだね・・・私には残された時間はそれ程、長くはないのだから・・・もし、その時が来たのなら自分の事を優先するがそれで構わないかい?」


 「構いません。時間の許す限りあの子についてやって下さい。」ガトーは、再び深々と頭を下げた。


 「まぁ、彼女が私の同行を認めなければ、話しはそれまでだ。」


 「それは問題ないでしょう。あの子は最良の選択をしますよ・・・私の愛娘ですから。」


 「ほんと・・・親バカだな・・・と、なると・・・彼女に一つ宿題を出さないと。」


 「宿題?」


 「私がタダで引き受けるとでも思いましたか・・・宿題をクリアしない限りこの話しはなかったって事で・・・それに私なんかより、ずっと彼女に必要なモノですから・・・」


 「何をさせるおつもりなのですか?」


 「言ったでしょ。彼女に必要なモノを用意させるだけですよ。」


 「必要な物・・・」


 「じゃあ、私は行っておきたい所があるんで失礼するよ・・・

 今度は、勝手に居なくならないから。」


 「何処へ行かれるのですかオージェン卿。」


 「私は何も彼女だけに可能性を見出して訳ではないのだよ・・・」

 そう言うとジェイドは、書斎を出ていった。

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