第50話 家族会議

 翌日から、アリスティディスの復興が始まった。

 本来なら宮廷魔導士達が率先的に関わる事案なのだが、昨日の一件で多くの魔導士が傷つき倒れた為、残った宮廷魔導士は、破壊された王宮の修復に宛てられた。

 街や広場の復旧は、瓦礫やらの片づけは住民たち総出で行い、自分達で治せる範囲で修復を行った。大掛かりな箇所は宮廷魔導士の復帰を待つ事になった。


 学院でも今回の事件で7人もの犠牲者を出した事もあり、卒業式の中止と言う案も出たが、流石に生徒達が可哀そうと言う意見が多く、1週間の延期で簡素なものを執り行う事になった。


 魔導院でも一つの動きがあった。ガトー=クレアが今回の騒動の責任を取って魔導院最高責任者の地位を退いたのである。後任はタルト=クレアが就任する事になった。


 今回の活躍で近衛騎士団の発言力が強くなり、宮廷魔導士との力関係が変わりシーホーク団長は満足気だった。




 三日後、街の修復もあらかた終わり、ガトーとタルトは実務から解放され屋敷に戻った。それは、久々にクレア家一家が全員揃う事になるのだった。


  ◇◇◇


 一方、ジェイド=オージェンはと言うと・・・。


 「おーぼーだー!理不尽だー!ここから出せー!」


 「うるさいぞ!黙ってられんのか!もう少しで釈放だ我慢しろ!」


 ジェイドは審判の門にて投獄されていた。


 「私が何をしたー!」


 「王宮に不法侵入したからだろ!」


 「濡れ衣だー!私は連れて行かれただけだぞ!」


 「あんたがクレア家の関係者じゃなければ、3日間の禁固刑だけではすまなかったぞ!」


 「ぐぬぬ・・・当主め~、一言文句を言ってやる~。」


  ◇◇◇


 クレア家では一同が広間に集まり家族会議が開かれていた。10人程座れる長テーブルに上座にガトー、右側にタルト、左側にスフレ、その隣にシフォンが就いた。


 「シフォン、スフレから大体のあらましは聞いている・・・私はお前の口から何も聞いていない・・・言いたい事があるなら自分の言葉で説明しなさい。」


 「お父さま、わかっています。わたしの話しを聞いて下さい。」


 「うむ、話しなさい。」


 シフォンは、旅に出ると言う想いの丈を語った。

 幼き日の母との思い出。伝説記≪レジェンダリー≫の事。

 留学生だったグレイスとの再会の約束でヴィクトリア皇国に行きたい事。

 そして・・・


 「わたしは・・・ユーワ=ホルテさんを救いたいのです。」


 「ユーワ=ホルテ・・・例の魔に魅入られた生徒か・・・

 しかし、その子は消息不明になっている闇雲に捜してもどうにもならないぞ。」


 「わたしもこの3日間、何もしなかった訳ではありません。

 ユーワさんのあの魔力を追って国中を捜しまわりました。

 でも、彼女の魔力を感じる事ができなかった。

 多分、彼女はこの国の外に出た・・・だから、旅に出ればいずれ彼女と出会う。

 そんな気がします・・・。」


 「お兄ちゃんは反対だ!その子を相手にするのは危険すぎる・・・今のシフォンにどうにかできるとは思えない。」


 「う~ん・・・私も反対だなぁ・・・シフォンちゃんに協力するって言っちゃったけど・・・ユーワちゃんにはもう関わらない方がいいわ。戦ったからわかる事もあるの・・・彼女は人の領域から逸脱した存在・・・魔族に変わってしまったのよ。彼女に出会ってしまったら戦いは避けられないと思うわ・・・・私には勝てるヴィジョンが見えません。」


 「ユーワさんがあんな風になってしまったのは・・・わたしのせい・・・だから、わたしはユーワさんを救いたいんです。」


 「どう救おうと言うんだ!無理だ諦めるんだシフォン。」


 「そうよシフォンちゃん・・・・無茶をする必要はないと思うわ。」


 「兄さま、姉さま・・・それでもわたしは諦めたくありません。」


 「だったらどうすると言うのだ!」


 「・・・・・・わかりません・・・・・・でも、何かできる事がきっとあるはずです・・・」


 ガトーは黙って兄妹の話しを聞いていた。

 そうしていると外が何やら騒がしくなっているのに気づいたガトーは含み笑いをした。


 「やっと来たか・・・。」


 扉の外からこぼれ聴こえる声。


 「お待ちくださいませ!只今、大事な話し合いが行われていますので、もう暫くお待ち下さいませ。」


 「ええ~い!そんな事、知った事か!」


 爺やが止めるもお構いなく、勢い良く扉を蹴破って男が乗り込んできたのだ。


 「当主よ~・・・よくも嵌めてくれたな~・・・許さん!」


 「オージェン卿。何をそんなに怒っているのですか。」

 ガトーは平静に対応する。


 「にゃにを怒ってるのですかだとー・・・知っててそれを言いますか!そうですか!」


 「まあまあ、落ち着いて落ち着いて・・・あなた的に言うならば、話せばわかる何事も・・・まあ、そこにお座り下さい。」


 爺やに促されてジェイドは席に着かされたが、憮然としていた。


 「・・・あのさぁ・・・当主の対面席にするのはいいんだけど・・・遠くない・・・ここ遠くない。せめて、タルト坊ちゃんの隣にしない。」


 「まだ、少し取り込んでいますので暫しそこでお待ちを・・・」


 シフォンはすかさず意見をした。

 「大事な家族会議の場にその人はここに居るべきではないと思います。」


 「私が構わないと言っているのだ、黙りなさい。」


 「何か・・・嫌な予感がするんですけど・・・・・・」

 ジェイドは不穏な空気を感じた。


 ガトーはあからさまに何やら企んでいる様だった。

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