第49話 誕生日

 ユーワは去った。シフォンはすかさず、姉の元へと向かった。


 「姉さま!大丈夫ですか!」


 「・・・シフォンちゃん・・・無事だったのですね・・・良かった・・・」


 「わたしの事より姉さまが・・・今すぐ回復魔法を使いますから。」


 シフォンがスフレの治療をしている一方でデービット達はと言うと。


 「ワタシ、マドウシサンノ チリョウニ、イッテキマス。」

 シルクは宮廷魔導士の治療に向かった。


 「しかしあんた、いったい何者なんだ?」


 「え!聞きたい聞きたい?」


 「あ・・・止めとくわ・・・私は人を呼んでくるわ・・・」

 色々、察してデービットはその場を離れた。


 「あ・・・行かれてしまわれた・・・」

 ジェイドは思っていた。


 私の役割は終わったかな・・・黙って去るとしますか・・・

 さらばアリスティディス。


 ジェイドが居なくなると病院から人がワラワラと出て来て、スフレ達宮廷魔導士を収容した。スフレ達の容体は軽い打撲程度だったが念の為、1日入院する事になった。シフォン達学院の生徒は程なく家路についた。



  ◆◇◆



 魔導院に訃報が届いていた。魔族の襲撃で民間人の犠牲者が出なくて安堵していたのだったが、突然、舞い込んだ訃報に落胆の色を隠せなかった。


 「学院の生徒が7人も・・・しかも、それをしたのが、魔に魅いられた生徒だと言うのか・・・」

 ガトーは嘆く。


 「父上・・・病院から連絡が入りました。スフレ他2 名は無事だそうです。魔に魅いられた生徒は逃走、消息不明。」


 「スフレの守護獣を退ける相手に良く助かったものだ・・・不幸中の幸いとはこの事か・・・」


 「その生徒を追い払った剣士らしき人物も姿を消したそうです・・・ってこの剣士って・・・」


 「間違いなくオージェン卿の事だろう。」


 「オージェン卿は、又、どこかへ行かれてしまうのでしょうか・・・」


 「彼にはまだ、やって貰いたい事が残っている。だから、手は打ってある。」


 「父上、何をお考えになられているのですか?」


 「今は、事後処理が優先だぞタルト。彼の事は後だ・・・。」


 ガトーとタルトは数日間、事後処理に追われる事になる。



  ◆◇◆



 シフォンは屋敷の自室に戻っていた。

 ベットに横たわり今日、起こった事を思い返す。


 ユーワさん・・・どうしてこんな事になってしまったの・・・

 わたしがいけなかったの・・・あの時、ユーワさんの意見を聞いていれば・・・

 ユーワさんはあんな事にはならなかったのかも・・・

 シチー君も亡くなる事もなかった・・・わたしのせい・・・

 わたしのせいで無関係な多くの生徒を死なせてしまったの・・・


 今日の出来事がシフォンの心に暗く影を落とす事になった。

 そこにコンコンコンと自室の扉をノックされる。


 「お嬢様。宜しければ広間の方に来て頂けませんでしょうか?」

 扉越しに爺やが声をかける。


 「どうかなされたのですか爺や。」


 「お越し頂けると有り難いのですが・・・」


 「わかりました・・・着替えましたら向かいますから。」


 「有難うございます。では、お待ちしています。」


 珍しいわね。爺やが本題を言わないなんて・・・

 まさか・・・又、嫌な事が起こったとでも言うの。

 シフォンは、今日の事もあって、物事を悪い方向へと考えてしまっていた。

 素早く着替えをすますと急ぎ広間へ向かった。


 シフォンは、広間の扉を開けると思いもしないモノが目に入った。


 「爺や・・・これはいったい・・・」


 そこには爺やをはじめとする使用人一同が揃っていて、

 部屋は綺麗に飾り付けされ、豪華な料理が用意されていた。


 「本日、痛ましい事件が御座いましたから、取り止めも考えましたが・・・

 やはり、年に一度の事なので御主人様の指示を仰いで執り行う事に致しました。」

 爺やが言い終わると、使用人全員で。


 「シフォンお嬢様。15歳のお誕生日おめでとうございます!」


 色々な事がありすぎてシフォンは、すっかり自分の誕生日を忘れていた。


 「・・・皆さん・・・ありがとう・・・・・・」

 シフォンは少し涙ぐんでいた。


 「我々、使用人だけで申し訳ございません・・・スフレお嬢様までお戻りになれないのは想定外でした。」


 「爺や・・・本当にありがとう・・・・・・」


 「お嬢様。こちらをお受け取り下さいませ。御主人様からです。」


 綺麗に梱包されたプレゼント箱をシフォンに渡した。


 「開けてもいいのかしら?」


 「どうぞ。」


 プレゼント箱を開けると中には、新しくあつらえた藍色のローブが入っていた。


 「これをお父様がわたしに・・・・・・」


 「選ばれたのはスフレお嬢様かと。」


 「そうですね、お父様が選んだにしては、センスが良すぎます。」


 そのローブを抱きしめると、暗く沈んでいたシフォンの心も少し晴れやかになった。

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