第38話 ユーワ=ホルテ
学院では怪物を倒し、生徒達が喜びを爆発させているのを達観して見ているジェイド=オージェンの姿もあった。
「急いで来たのにあっさりと終わってしまいましたね・・・残念だ・・・私の観たいモノは見れませんでしたね・・・まぁ、良いでしょう。他で良い物を見れましたから・・・で、他はどうなってるかだが・・・近衛騎士だったかな、なかなかやるじゃないか。」
南下した近衛騎士団は、まずは一体の魔族を審判の門の部隊と挟撃を果たし、瞬く間にそれを討伐した。返す刀で次の魔族の元へと向かいそれもあっさりと倒してしまったのだ。だがそれには幾つかのカラクリがあった。まずは、戦力の集中。いわゆる数の暴力と言うヤツだ。戦力の分散を避け一体ずつ倒して行く判断が功を奏した事もあるが、事前に敵の情報を入手していた事も大きかった。団長のシーホークは飛ぶ事の出来ない敵を選びそこを優先して戦いを挑んでいったのだ。騎馬隊中心の近衛騎士団は、その戦い方も単純で二列にした縦列隊形を組み、すれ違いざまの突貫攻撃を繰り返すものだった。それは、個の相手には絶大の威力を発揮した。そして、もう一体倒し北へと進路を向けた。残る魔族は二体になった。
学院には宮廷魔導士の救援が到着していたが、既に怪物は倒されていて一同驚愕していた。
「君達があの怪物を倒したと言うのか・・・・信じられん・・・・・・」
「あは~ん。僕の活躍で化物を退治する事ができたのさ~」
「・・・早速、重傷者を病院に搬送するぞ!」
「あの・・・僕の活躍を・・・・・・」
「リチャード先輩。相手にされてませんよ。邪魔になりますからあっちに行きますよ。」リョーコはリチャードを引きずって隅に行こうとしていた。
「あ、そうだ、ちょっと前に学院の制服を着た女性を搬送したんだが、身元が解らないんだ誰か知らないか?・・・確か金髪でスカーフが最終学年の物だった。」
「金髪で最終学年・・・流石に該当者が多いですね・・・」
「金髪で思い出したよ~今日はコリーダ君の姿を見ないねぇ~」
「そう言えばそうですね。何かとシフォン先輩に張り合ってる方が全然、出しゃばってきませんでしたね。道理でスムーズに事が運んだ訳か・・・」
「今の話しどう言う事なんですか?」シフォンが聞き直した。
「ああ、中央広場の近くで化物と戦闘があったんだ、どうやら、それに巻き込まれたらしい。」
「容体は、容体はどうなんですの?」
「重傷だが命に別状はない。ただ、意識が戻ってないんだ。」
「それは、大丈夫なんですか。」
「自分は専門じゃないから分からないが・・・病院には優秀な術師が揃っているんだ大丈夫だよ。」
「それにコリーダ君と決まった訳でも無いだろう。確認しない事には・・・」
「それだったら直ぐに確認しに・・・」
「今は混乱ただ中だから、生徒は事態が鎮静化するまでここに居るんだ。」
「でも・・・」
「シフォン先輩。少し落ち着いて下さい。命に別状はないと言っているのですから。」(珍しいですね。シフォン先輩のあわってぶりは。)
「それだけ大切な友人って事だろうさ~」
「別にそう言う訳ではありませんが・・・」
「兎に角、君らはここを離れないようにね!」そう言うとその宮廷魔導士は自分の仕事へと戻って行った。
そのやり取りを遠くから見ている者がいた。
なんで、なんで、コリーダの事はあんなに心配するのに・・・私の事はほったらかし・・・シフォンさん何でですの・・・・・・
ユーワの中にどす黒い得体の知れない感情が沸き上がっていた。そんな彼女に班のメンバーが話しかける。
「ユーワ大丈夫か?そんなに気にするなって。俺達だってダメージが大きくて、今回の協調魔法から外されたんだから・・・・・・」
「ワタシモ、カイフクヤクニ、センネンデシタカラ・・・」
「俺も悔しいんだ、こんな大事な時に役に立てなくて・・・」
「シチー、シルクさん、ダイナ君も・・・ありがとう。私は大丈夫だから・・・」そう言うとユーワはその場から離れ様とする。
「おい、何処へ行くんだよユーワ!」
「ごめんなさい・・・独りになりたいの・・・」
ユーワはフラフラとどこかへ行ってしまった。班の仲間はただ見送ってしまった。
「おい、大丈夫なのかユーワさんは・・・彼氏、何とかしろよ。」
「ソウデス!コーユートキハ、カレシガハゲマスモノデス。」
「ああ、わかってるよ。でも、どうすりゃぁ良いんだよ。」
「ダマッテ、ダキシメルノデース。」
「まぁ、そう言うこった・・・ついでにキスしても良いんだぞ。」
「キャー、イイデス。キス、イイデスネソレ。」
「・・・楽しんでないか君ら・・・・・・」
「そんな事ない・・・はよ行け!見失ってしまうぞ!」その言葉に促されてシチーは走り出していった。
「ウマクイクト、イイデスネ・・・」
「そうだな・・・」
シルクとダイナは願った。ユーワが立ち直る事を、二人が上手くいく事を・・・
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