第35話 コリーダの死

 あ~あ、一度は、勝ちたっかたな・・・とコリーダは思いながら静かにその一生を終えようとしていた。そこへ、何者かが彼女の元へと歩み寄ってきた。


 誰かが来た・・・・でも、もう見えない・・・そこに居る事はわかる・・・助けがきたのか・・・何かを言ってるけど・・・良く聞き取れない・・・


 彼女は、その後に起こった事を朧気にしか覚えてないと言う。ただ、その何者かが言ったと思われる、断片的な言葉が印象に残りそれを覚えてたと言う。


 『シンイキ』 『死ねば助かる』 と言う言葉だった。ハッキリ覚えている訳ではないが確かにそう聴こえた気がした。




 コリーダと魔族の戦いの一部始終を見ているモノがいた。そのモノは、戦いが終わると少し興奮気味にコリーダの元へとやって来たのだ。


 「いやー・・君、凄いね。又、魔力弾≪マジックショット≫の一つの可能性を魅せられるとは思わなかったよ。しかも、自力で辿り着くなんて・・・・」


 そう言うとそのモノは、コリーダを覗き込む様にみつめ、その状態を知る。


 「おお・・・これは・・・すまないが私では、君を治療する事は出来ない・・・かと言って誰か呼びに行ってもその間に君は・・・亡くなってるだろう・・・・」


 コリーダは、そのモノに気づいた様だが、何か話そうと口をパクパクするのだが、言葉にならなかった。その様子をみてそのモノは、思う所があったのだろう彼女に何やら語りかけた。


 「もう、喋る事すら儘ならない、眼も見えてない・・・・と言う事は聞こえてもいないかも知れないけど・・・もし、聞こえているなら、耳を傾けてくれ。」


 そのモノは一方的にコリーダに語りかける。


 「本来なら、今の人の生き死にに関わる気は無いのだけど・・・良い物を見せくれた礼はしようじゃないか。だから君にほんの少しの時間を作って挙げよう。これから私のする事は、インチキでマヤカシだ。でも、そこで起こる事は、現実に反映される。今から君を私の・・・ 『シンイキ』 に入れる・・・そこで、君自身で君を助けるんだ・・・・それでも無理だと思ったなら・・・・一度・・・ 『死ねば助かる』 ・・・かもしれませんよ。」


 そう言うとコリーダの頭に手を当てた。そうすると揺らぎの様な何かがコリーダとそのモノを包み込んだ。


 この時の記憶はコリーダには残っていないのだが、何かをしたと言う感覚だけが残った。


 コリーダは、その揺らぎの様な何かを感じると、不意に体が軽くなる感覚を感じると。


 手が動く、体も軽い、眼も見える、痛みもない・・・何だろうここは・・・まるで時間が止まっているみたい・・・そうか、ここで自分で治せって事なのか。そして感じ取る、ここが完全には時が止まってないのを。腹部の患部からの出血が止まっていない事を感じていたのだ。言うならば時間の流れが恐ろしく遅い世界。限りなく時間の止まった状態に近い世界。そう理解したコリーダは、自身の治癒を試みた。この世界で魔法が使えるのか疑問に思うが、やってみるしかなかった。おもいの外、それは、上手くいった。止血する事はできたのだが、損傷した内臓の回復は、今のコリーダの状態では無理だった。

 そうか、動く事は出来ても体の状態はそのまま、魔力もそのまま・・・万策尽きたって事か・・・・ 『死ねば助かる』 不意に頭によぎったのである。


 ・・・・死ねば助かる・・・・そうだ、仮死状態になれば、助けが間に合うかも知れない。


 コリーダは、一縷の望みを賭けて自身に死の魔法を使ったのだ。




 「及第点ですね・・・後は、君の運しだい・・・丁度、助けも来たみたいだし、私は行きますね・・・生きていたら、又、お会いする機会があるかもしれませんね。」


 そのモノは、そこから去ると、増援の宮廷魔導士達がやって来た。そして、仲間達の無残な姿を見つけた。


 「惨い・・・何てことだ・・・」


 「あっちにも誰か倒れているぞ!」 急いでそこへ向かった。


 そこには、学院の制服を血に染めた少女が横たわっていた。


 「息をしていない・・・・血は止まっている、自分で止血したのか・・・兎に角、回復魔法を。」


 宮廷魔導士は懸命に治癒の魔法を使い続け、少女は、息を吹き返した。


 「よし!後は、専門の魔導士に任そう。病院に運ぶぞ。」


 「それにしても、この子があの化物を倒したんですかねぇ。」


 「まさか、まだ、学生だぞ・・・しかし、他には誰も見当たらない・・・まさかそんな事は・・・」


 宮廷魔導士達は、少女を病院へと運び、仲間の亡骸を回収するとその場を後にするのであった。



 ちなみにコリーダの記憶が曖昧なのは、自分に施した死の魔法の影響だそうだ。

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