第29話 共闘の申し出

 学院では、二人の宮廷魔導士が到着し、校庭にて異形の魔族と交戦状態に入っていた。その一方で校舎では、最初の爆発で瓦礫に埋もれた生徒の救出、負傷した生徒の治療を無事だった生徒達が協力しておこなっていた。そんな慌ただしいさなか、二人の生徒が魔導科の教室に訪れた。


 「あはーん、魔導科の生徒諸君!元気かーい!」あからさまに、チャラい赤髪の剣士風の男子生徒と。


 「おいおい、今は、そんな事を言う状況じゃない事も解らんのか貴様は!」如何にも堅物そうな、青髪、眼鏡の槍を持った男子生徒が教室に入ってきた。


 「ハーイ!シフォン=クレア君。相変わらず美しい・・・僕と結婚しないかい?」


 「キーィ!シフォンさんに近づかないで!この間男!」


 「おぅ、マドマアゼル、ユーワ君。今日も可愛いね・・・僕と付き合わないかい?」


 「私には、素敵な彼氏がいるんですからね!それはそうと、武術科が何しに来てんのよ!」


 「怒った顔もキュートだね・・・やはり、僕と・・」青髪の生徒が割って入る。


 「リチャード!貴様ここに何をしに来たと思っているんだ!遊びに来ている訳じゃないんだぞ。」


 「えーとっ、確か・・・デービットさんで良かったかしら・・・」


 「はい。シフォン=クレア殿、お久しぶりです。さておき・・・折り入ってお話しがあるのですが・・・」


 「わたしにですか?」


 「いえ、ここに居る魔導科生全員にです・・・・武術科と魔導科で共闘しませんか?」


 「・・・あの怪物と戦うと言う事ですか・・・・」シフォンの脳裏によぎる爺やの言葉。『迂闊な行動をなさらぬ様に。』


 「駆け付けてくれた宮廷魔導士ですが、自分が見ても明らかに劣勢・・・いつ来るか分からない救援を待つより我々で打って出た方が良いと思うのです。ここには、多くの一般生徒や怪我人がいます、それを守りながら戦うのは、不利です。こちらから先手を撃てば戦い安くなると思うのです。」


 「その通りですが・・・ここは、先生方の指示を仰ぎましょう。」


 「それなんですが・・・自分達もそう考え、ここに来る前に教員室に行ったのですが・・・・酷い有様でした・・・かろうじて息はありましたが、あれでは指示を出すどころの話しじゃない・・・」


 シフォンは、二の足を踏んでいたが、この状況で何もせずには入られなかった。


 「戦うのが正しいとわたしも思います・・・でも、闇雲に戦っても逆に痛いめに遭いかねません。」余程、応えたのだろう先日の天使の一件がシフォンは、慎重になっていた。


 「こんな事もあろうかと、連れて来ておいたよーあのカワイ子ちゃんを・・・」


 「・・・・カワイ子ちゃんって・・・・」


 「入り給え~」その声を聞いて、黒髪おかっぱ頭で丸眼鏡をかけた女生徒がクルクル回転しながら教室に入ってくる。


 「はいはーい、何でも解析、解析の事なら何でもお任せ!解析屋アナライザー・リョーコとは私の事だ!ワーハッハハ・・・・」


 「ンま、痛い子なんだけど、解析魔法は、右に出る者はいない・・はず・・」


 「リチャード先輩、貴方には、言われたくありません。」


 「あなたは、三回生のリョーコ=モノノベさんですね。」


 「う、嬉しいです~~シフォン先輩に名前を覚えられているなんて、しかも、フルネームで!」


 「色々と有名人ですからね・・・」


 「そう言う訳だから、解析結果をヨロシクだよリョーコ君。」


 「リチャード先輩は、話しかけないで下さい!折角、シフォン先輩とお喋りしてるのにあっち行ってて下さい!」


 「お前ら、今は、一刻を争う時なのに何をやってんだ。とっとと解析結果を報告せんか!」


 「デービット先輩は、せっかちですね・・・仕方ありませんね。あの化物の事ですが・・・」その場に居た生徒達は、固唾を呑んだ。



 「あの化物の事は・・・一切、解りませんでしたー。」



 「おいおい、それじゃぁ、全然ダメじゃないか~。」


 「何を言っているのですか、貴方は!解らない事が分かったと言う事が大事なんです。」


 「しかし、それでは困りましたわね・・・・」


 「いえ、そんな事はありません。あの化物と宮廷魔導士の戦いを観察していて解った事はあります。」


 「何だいそれは、リョーコ君。」


 「これは、私の考察ですが・・・あの化物は、魔法を使うそぶりがまるでありません。物理攻撃しか出来ないのではと言う可能性があります。でも、そうなると、最初の爆発は何だったのかと言う疑問が生じる、それは、別の何者かに付与された力だと予測します。勿論、そうでない可能性は有りますが・・・・」


 「君は、あの化物が物理攻撃しかしないとみてるのかい。でもそれだけでは、何の対策も立てられないじゃないか~。」


 「リチャード先輩、話しはこれからです。いちいち話しの腰を折らないで下さい。では、続けます、宮廷魔導士の攻撃が全く効いてない訳じゃない。あの化物の回復力がそれを上回っているだけ・・・でもその中にあって、ある魔法攻撃を受けた時だけ、その回復が遅れている事に気づいたのです。恐らくそれが弱点属性なのではと考えます。」


 「なるほど、その弱点属性を突けば、あの化物を倒せるって事かい~で、その属性とは何なんだい?」


 「ずばり、水属性です!そこで協調魔法、水流大渦 アクアシュトリーム の使用を提案します!この大魔法なら、あの化物の回復力を上回り、体力を削り切る事が出来るはずです。」 根拠はありませんが。  


 「シフォン殿、君は先日の試験で協調魔法の紡ぎ手をしたと聞く、先生方があの状態では、君に頼るか・・・何とか宮廷魔導士に接触して紡ぎ手を頼むしか方法が無い・・・シフォン殿。君、次第で我々の方針が変わる・・・どうする?」


 「・・・・わたしは・・・構わないわ。でも、他の皆様が了承するかどうかは・・・・」


 「シフォンさんがやると言うなら、私達も当然、やりますわ!」ユーワがそう言うと他の生徒達もそれに同調した。


 「あはーん、話しは決まりの様だね。それでは、作戦立案と行こうじゃないか~。」


 「その事だが・・・既に考えてある。」


 思いかけず、魔導科と武術科の共闘が実現する事になる。シフォンは、今度は上手くやると言う決意をするのであった。

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