第30話 由緒正しい戦い方

 その頃、中央広場では、ジェイド=オージェンが水浸しの地面に大の字になって倒れていた。


 「ワンちゃん・・・君の勝ちだ・・・・」


 「キャハハ、勝った勝った!」


 「・・・・嗚呼・・・想えば、モフりたいだけの・・・人生だった・・・」


 「キャハ、そんなにモフりたかったのか?だったら、うちと殺って勝てたら、モフらせてやってもいいぞ!」


 「なにぃーー!それを早く言わんかーい!」ジェイドは、ばっと跳び起きた。


 「キャハ、ようやく、うちと殺る気になってくれたんだね・・・」明らかにワーストベルの様子が豹変する。


 しまった・・・思わず立ち上がっちまったぜ・・・どうする私・・・



 「マリアベルに借りたこの玩具、使っちゃうもんね~。」


 「オモチャ?」


 ワーストベルは、腕輪を外すと、それを空に放り投げた。すると、球体の闇が広がり、ワーストベルはその中に飛び込むと、黒い無機質な物体が姿を現した。


 「これは・・・・黒の天使ですか・・・・」 魔族が天使を使うなんて・・・面白いじゃありませんか・・・でも・・・


 黒の天使は、上空を縦横無尽に飛び回ると、ジェイドを見下ろす位置で止まった。


 「キャハハハ・・カッコイイでしょ~。んじゃ、はっじめるよー!」 そう言うと黒の天使は、ジェイド目掛けて急降下して突っ込んだ。激しく衝突すると、ジェイドは吹っ飛び広場の外の民家に突っ込んだ。バキバキと瓦礫が崩れる中、ジェイドが民家から姿を現す。



 「・・・何て事をするんですか!あなたは・・・・家の人に謝って!」


 「キャハハ、凄い凄い!なんで生きてるんだ?普通の人間なら死んでるよ!」


 「全く、最近の若いもんは、謝る事も出来ないんですか!」


 「しかも、ダメージがまるで入ってないよ!どうなってんの?キャハハハ・・・」


 「これは、躾けが必要ですね・・・・ぐへへ。」   


 噛み合わない二人の会話。ワーストベルは、再び天高く舞い上がる。


 「まあ、いいや!どうせ殺っちゃうんだし・・・今度は、本気で行くかんね!」


 もう一度、ジェイドに向かって突進する黒の天使。


 「やれやれですね・・・これ以上、無関係な人の家を壊すのは、何なんで・・・」



 黒の天使は、ジェイドに対して体当たりをかますのだが、すり抜ける様に交わされるのだった。ワーストベルは弱冠の困惑を見せるものの、再び体当たりを敢行する。


 「ごめんね。もう、当たらないから・・・」 今度は、完全にすり抜けている事を自覚するワーストベルは、ジェイドの前に降り立った。


 「キャハ、知ってるよ!今のがマリアベルが言ってた・・・『シンイキ』って奴でしょ!それ、どうやってんの?」


 「マリアベル・・・なるほど、『シンイキ』を知っているのか・・・・でも、その全容は、理解してないのね。ワンちゃんに話して理解できないと思うんで、チョットだけ攻略のヒントをあげよう。」


 「何なのだそれは!」


 「本来ならば、君の様な直感タイプには、相性の悪い技なんだが・・・そのオモチャを使っている以上は、君の攻撃は、私には届かない・・・・だから、元の姿で戦う事をお勧めするよ。」


 「・・・そなのか?うーん・・・」 ワーストベルは、少し悩むとすぐさま答えを出した。


 「わかった!辞めるぞ!!」 そう言うと、あっさり、天使化を解くワーストベル。


 「へ・・・意外に素直・・・・ええ子やの~」 マジで・・・もっと意固地になるかと思ったが・・・失敗だったかな。


 「キャハ、良く言われる!じゃぁ、早速、続きをしよ!!」 ブルンブルンと尻尾を振り回し、明らかに興奮状態だと解る。


 「お、おう・・そうだな・・・・」 うーむ、不味い。こう言う子は、単純だから、簡単に答えを出しちゃうんだよな・・・『シンイキ』攻略の。


 ワーストベルは、広場を水飛沫を上げながら駆け回った。その爪で攻勢をかける。ジェイドは、それを先程と同じ様にすり抜ける様に交わす。が、次第にジェイドの表情が強張る。


 精度がどんどん上がって来てやがる・・・私の本当の居場所を直感で捉え始めている。



 「そこか~」 爪がジェイドの本体をかすめる。



 「あぶっ・・・・これは・・・洒落にならない事になってきたね。」 『シンイキ』だけでどうにかしようと思ってたのですが、そうもいかない様ですね・・・・あっちの力は使いたくないからなぁ・・・別の手立てを考えないと。


 「キャハ、何となく、わかってきたぞ!今度こそ当てるぞ!」


 そして、その時がやって来る。遂にワーストベルの爪がジェイドの本体を捉えたのだ。だがそれは、ワーストベルに又、別の違和感を感じさせる事になる。


 「手応えあった!・・・・でも・・・何か変だ!何時もと違う爪の感触・・・」


 ジェイドは、又、大の字で倒れていた。


 「いやいや、本当に当てられるとは思いませんでしたよ・・・本当にお強い・・・でも、そろそろ気づいて欲しいですね。これ以上、戦っても意味の無い事に・・・」スーッと立ち上がるジェイド。


 ワーストベルは、ジェイドを良く観察する。そして、気づく。


 「なんでだよ!こんな水浸しの所に寝っ転がっていたのに・・・なんで、濡れて無いんだよ!それに、確かに手応えがあったのに、怪我一つしてないんだよ!」


 「やっと気づいてくれましたか・・・・その答えは、実に簡単・・・私は・・・既に死んでいるからですよ。」


 「嘘だ!何度もぶつかってたし!気配だって感じるぞ!」


 「世の中と言うのは、摩訶不思議なモノで実体を持ったユーレイって奴が居るんですよ。」 実際は、もっと別なモノなんですけどね。


 「そんなの信じないぞ!うちが勝つまで続けるぞ!」


 「素直ないい子だと思ったのに・・・・仕方ないですね・・・ここは、由緒正しい戦い方で決着を付けませんか?」


 「ゆいしょ正しい戦い方?なんだそれは!・・・普通に戦った方が面白いぞ!」


 「フフッ・由緒正しい戦い方では、勝てないって事ですか?それでは仕方ないですね。逃げ腰の相手に勝っても嬉しくありませんからね。」



 「にゃんだと!うちはどんな勝負にも負けないぞ!そこまで言うならやってやろうじゃんか!」



 「そう来なくては、流石、ワンちゃん。私が見込んだモフモフだ。」


 「で、何をするんだ?」


 「フフのフ。それは勿論・・・・ジャンケンです!しかも、三本勝負。」


 「何でもいいぞ!・・・・・で、ジャンケンってなんだ?」


 「・・・・そこからか~い!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る