第27話 ワーストベルとジェイド

 王宮から飛び降りたジェイドは、フワッとまるで重さが無いかの様に、家の屋根に舞い降りた。そのまま、屋根伝いに中央広場に向かった。


 中央広場に着いたジェイドは、辺りを見回した。壊れた噴水の瓦礫に座り込む狼の獣人とうなだれる亜人達と水浸しの地面に傷つき横たわる人間二人を確認した。


 「おーい、そこの亜人さん方。多分、動く事が出来ると思うから、こっち来てよ。」


 「今の俺達は、うご・・・動ける?・・・どうして・・・」


 「うん、戦いと言う行為に誓約がかかってるだけで、動く事、事態は問題ないと思うぞ。それでだ、そこの二人、連れて行ってくんない・・・このままだと出血多量で死んじゃうよ。」


 「おう、わかった・・・でも、あんた、あいつと戦うつもりか?」


 「まさか、戦おうなんて思ってませんよ。勿論、話し合いで解決ですよ。」


 「・・・・話し合いが成立する相手じゃ無いと思うが・・・まぁ、頑張れ・・・」 亜人達は怪我を負た人間を背負いその場を後にした。


 「キャハ、終わったかい。」ワーストベルが話してきた。


 「待ってくれたんですね、優しいな~。」


 「お前・・・上からずっと、見てただろ!うちには解るぞ!」


 「おや、お気づきでしたか・・・・流石、ワンちゃん。」


 「ワンちゃんじゃないぞ、ワーストベルだぞ!」


 「おお、そうか、ワーストベルちゃんか・・・ワンちゃんでいいじゃないか!」


 「あ、そっか!略してワンちゃんか・・・キャハ、まぁ、いっかー・・・じゃあ、殺ろうか!厄災!」 


 「んん!ヤクサイ?なんのこっちゃ・・・私はそんな物になった覚えは無いぞ!」


 「違うのか?」


 「違うぞ!」


 「・・・・嘘だ!お前、絶対、厄災だよ!・・・だって、お前、普通の人間じゃないじゃんか!」


 「私は、至って普通だが・・・」


 「お前・・・臭いがしない・・・・臭いのしない人間なんていないぞ!」


 「究極の潔癖症だから、臭わないのさ。」


 「えーい、もういい!!殺るたら殺る!」問答無用に戦闘態勢に入るワーストベル。


 「ワーワー!ちょっと待ったちょっと待った!わかったから・・・やってヤルから・・・その前に一つ頼みがあるのだが・・・・」


 「頼み!?何だそれは?」


 「ヤル前に・・・その毛並み・・・・ぐへへ・・・モフらせてくれー!」


 ワーストベルは距離を取り、身構えると、ガルルル・・と威嚇した。


 「大丈夫、大丈夫!怖くない怖くない!よーしよしよし!モフらせてくれれば、私とヤレるんだよ~。」


 ジェイドは、じりじりと距離を詰めようとする。ワーストベルは、本能的に危険を感じたのだろう、近づこうとしないで、一定の距離を取ろうとする。


 「大丈夫だから・・・ちょっとだけだから・・・ぐへへ。」


 水浸しの中央広場で奇妙な追いかけっこが始まるのだった。

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