第23話 動乱の始まり

 何事もなく朝を迎えていた。


 シフォン達、学院の生徒は、避難訓練をすると言う名目で朝早くから登校する事になっていた。一部の生徒はこの急な行事に不信に思う者もいた。

 シフォンも昨日の出来事で、何かが起こる事を察していた。

 そして学院に来る前に爺やに耳打ちされていた。


 この国に魔族が入り込んでいます。迂闊な行動をなさらぬ様に と。


 結局、わたしには何もするなって事なんだ・・・わたしにだって、出来ることがあるはずなのに・・・シフォンは憤り感じずには入られなかった。


 生徒達は取り合えず教室で何らかの支持があるまで待つ事にした。




 「シフォンさん、おはようございます。」一人の女生徒話しかけてきた。


 「ユーワさん、おはよう。」


 「しかし、何で急に避難訓練なんかしなくてはならないんですかね。すぐに卒業なのに・・・・でも、良かったですわ、今日、シフォンさんに会えて・・・・お誕生日おめでとうございます。」


 「ありがとう!覚えていて下さったのですね。」


 「当たり前じゃないですか。同じ班の仲間でお友達なんですから!」


 それを聞いた周りの生徒達も、シフォンに祝いの言葉を投げかけ、盛り上がりをみせた。シフォンは、少し気恥ずかしかったが嬉しく思った。

 そのさなか、同じ班のシチー、ダイナ、シルクの三人もやって来た。


 「ユーワサン、ヒドイデス~」


 「ユーワてめー抜け駆けしやがって。」


 「四人揃ったら言うって決めてただろ!」


 「そんな約束をした覚えはありませんわ!」


 いつも通りの班のみんなの様子を見てシフォンは、安堵していた。先日の天使の襲撃で精神的ダメージを受けているはずなのに。


 「おーい、みんな揃ってるか~」 教師が入って来て問うた。


 「先生!コリーダさんが来ていません!」


 「まーた、あいつか!・・・まぁいい、避難訓練と言うことだが・・・俺らも何も聞いてない!と言う訳だから・・・お前ら取り合えず自習しとけ!あんまし騒がしくするなよ。」 教師はそう言うと去って行った。


 生徒達は雑談する者達、寝る者、おもいおもいの行動を取っていた。その時、外から大きな爆発音が轟いた。


 一人の生徒が窓を開け体を乗り出し指さした。「王宮から煙が上がってるぞ!」 教室は騒然となった。


 「マジかよ!いったい何が起こってるんだ?」


 生徒達が混乱しているさなか、再び爆発音が響いた。今度のそれは、街の四方から次から次へと爆音が連鎖する様に響き渡った。そのは、7回を数えた。


 「おいおいおい!町中から煙があがってる・・・・何がどうなってるんだよ!」


 「あっちは、火の手が上がってるわ!!」


 「みんな!落ち着いて!ここに居れば安全だから・・・」


 一人の生徒が気が付く。「校庭に誰か入って来たぞ。何か様子が変だ・・・・」


 憲兵らしき男がヨロヨロと校庭の中心に来ると、奇声を発した。


 「グギギギィ・・ギギャギャギャギャァ・・・・」


 男はボコボコと体が膨れ上がった。それを見たシフォンは、叫んだ。


 「みんな!伏せて!!」


 その言葉を言ったと同時に男は、大爆発を起こした。爆風で校舎は焼きただれ窓ガラスは四散し、窓際にいた生徒は血まみれになって倒れていた。シフォンも爆発の衝撃で一瞬、気を失っていた。


 「シフォンさん、シフォンさん!大丈夫ですか。」


 「ユーワ・さ・ん・・・わたし・・・何を・・・・」シフォンは、記憶が飛んでいる様子で、教室の惨状を見て、我に返る。


 「こ・これは・・・みんな、だいじょ・・・・」 そして、目に飛び込んできた、シチーとダイナが血まみれになって横たわる姿を。


 「お二人が私達をかばってくれたんですわ・・・・二人は、私とシルクさんで回復させます。シフォンさんは、頭を打っている様ですし、休んでいて下さいませ。」


 「そんな、わたしも・・・」 頭がクラクラする・・・・・


 「ムリヲ、ナサラナイデクダサーイ。ワタシ、ガンバリマスカラ!」


 無事だった生徒が、怪我を負った生徒達を回復魔法で治療する中、一方、外では、煙の立ち込める中から、異形の魔族が姿を現した。

 その姿は、全体に濃い緑色をしていて、頭に大きなコブが幾つもあり、それに巨大な唇が付いていて、目は見当たらなかった。ボッテとした胴体に大きな手と短い巨大な足があった。この世の物でないことが一目で分かる風体をしていた。


 「・・・我、ココ、居ル奴・・・全部、喰ラウ・・・・」





 時間を少しだけ遡る。王宮では、タルト=クレア率いる精鋭の宮廷魔導士数名が、ブラウン=ビトール元老院議員を確保しようと動いていた。


 「ブラウン議員。ちょっと、お耳に入れたいお話しがあるのですが・・・」


 「タルト君、こんな朝早くから何の用かね・・・わしは、忙しいんじゃ。」


 「次期、宰相を狙う貴公に、とても有益な情報があるのですが、忙しいんだったら、しょうがありませんね・・・・」


 「なにぃ!そう言う事は、早く言いたまえ。」


 「ここでは何ですので、場所を変えましょう。」


 タルトは、ブラウンを元老院から連れ出すと、来賓用の控室に入った。すると、数名の宮廷魔導士がブラウンを取り囲んだ。


 「いったい何の真似だ。無礼だぞ!」


 「貴方には、国家転覆罪の容疑が掛かっています。大人しく捕まるのなら手荒な真似は致しません。」


 「こんな事、許されると思っているのか!!」


 「えぇ、許されないでしょうね・・・貴方が本物のブラウン議員だったらね・・・」


 「わしが、偽物とでも言いたいのか!そんな証拠どこにある!」


 「もう、見付けているんですよ、ブラウン議員の遺体をね!」


 「・・・・・・あの馬鹿!全部残さず喰えと言っといたのに・・・・まぁいい、予定とは異なるが、かまいわしない・・・・てめえら、全員、ここで死んどけ!」


 ブラウンの皮膚はただれ落ち、その奥から、滑らかで光沢を帯びた紅い皮膚を持つ、爬虫類型の魔族が姿を現した。


 「俺の名は、アフリート。いずれ王になるモノだ!」

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