第22話 前夜

 ガトーとジェイドは王宮にある魔導院に着いていた。そこで、一人の男が出迎えた。


 「父上!こんな時間に登宮とは、如何なされたのですか?それに隣の御仁は・・・・」


 「タルトよ、至急、信頼のおける魔導士を集めるのだ!」


 「えぇ、今からですか・・・・今からだと集められる人数がかぎられますが・・・」


 「構わん!集められるだけで・・・・」


 「わかりました。直ぐに招集をかけます。」


 タルトは、淡々と魔導通信を行い始めた。一方、ジェイドは、傍から見るとただボーッと突っ立てるだけに見えた。


 「オージェン卿、何か解りますか?」


 「んん!あ・いやなに・・・この王宮なかなか面白い造りをしていると思って・・・」


 アリスティディスの王宮は、概ね四つの区画からなる。北の王族が住まう後宮、中央から南にかけての政治を司る元老院、西の宮廷魔導士が集う魔導院、東に近衛騎士団の詰所である。


 「そうでしょうか、ごくごく普通の造りだと思いますが・・・」


 「・・・後宮が特別な造りをしているね、これは・・・魔除け・・・・」


 「後宮に結界の様なものが仕込まれている話しは、聞いた事がありませんが・・・」


 「うん、結界とは違うね。魔を拒絶する感じかね・・・・」


 「それはどう言う事ですか?」


 「要は、魔族が入ろうとしても反転してしまう造りをしている・・・だから、ここに来る前に危惧していた王様に取ってかわっているて事はなさそうだ。まぁ、王様が後宮から出て来ていたら、話しは別だけどね。」


 「なるほど・・・・所でもう、魔族の居場所の検討がついているのでは?」


 「まあね・・・で、早速、乗り込むのかい?」


 「そうですね・・・確認だけは、しておきたいですね。隠れ潜んでいるのか、それとも、何者かに成りかわっているのか知りたいですね・・・」


 「んじゃ、行ってみますか?」


 「ま、待って下さい、父上!一体、何が起きているのですか?」


 「すまん、説明してなかったな。この王宮に嫌、この国に魔族が入り込んでいる・・・」


 「いや、そんなまさか・・・・・・もしかして、一緒の御仁は・・・オージェン卿なのですか?」


 「よ!タルト坊ちゃん。大きくなったな~・・・むむむ、私より大きくなっているじゃないか!」


 タルトは、全て察した。


 「招集は済ませました。自分も御一緒させて貰います・・・・で、何処へ向かわれるのですか?」


 「真ん中。」


 「元老院・・・・・」


 三人は、元老院に歩みを進めた。そして元老院の大きな扉の前に立つとジェイドは、空気も読まずバーンと扉を開けてしまう。


 「ここが、元老院ですか!!広いですね~」


 「オージェン卿!いきなり何をするんですか!」


 「ん?何か不味かった?」


 元老院には、職員らしき人々がまばらに居る程度だった。ただ、その中に一人、明らかに身分が高い身なりをした人物がいた。


 「おやおや、騒がしいですね。クレア家の当主とそのご子息とあろう方々が・・・」


 「あなたこそこんな時間までお仕事ですか、ブラウン議員。」


 「えぇまぁ、仕事が立て込んでおりましてね、仕方なしですよ。しかし・・・部外者を連れ込まれては、幾ら、クレア家が名家であっても、許される事ではありませんよ!」


 「そんな堅い事言わずに大目に見て下さい。直ぐに帰りますので・・・」


 「ふん!この事は問題にさせて貰いますからね!」


 ぶつくさ言いながらブラウンは立ち去った。


 「うん、大体、わかったから帰りましょ!」


 「もう宜しいのですか?」


 「早く戻った方が良いでしょ、色々と・・・・」


 三人は魔導院に戻ると話し合いが始まる。


 「それで、結論から聞かせて貰って良いですか?」


 「あの禿のちょび髭・・・・」


 「ブラウン議員の事ですか・・・・」


 「彼・・・人では無いね・・・・恐らく本物はすでに・・・・」


 「・・・ブラウン議員、何時も定時に帰る様な男が、この時間まで残っている時点で怪しかったが・・・・」


 「父上、人が集まり次第、身柄を確保しますか?」


 「いや、まだ町中に魔族が潜んでいる以上、その対策を取ってからでないと・・・それに夜に魔族と戦闘になるのは避けたい・・・・」


 「では、明朝、避難訓練と称して住民を避難させましょう。そして、魔族が潜伏しているおぼしき地点に人員を配置してから確保に動くと言う事で決まりですね。」


 「・・・宮廷魔導士だけでは手が足りないかもしれないな・・・騎士団を動かせれば良いのだが、恐らく、こちらの要請には答えてはくれんだろう・・・」


 「獣士隊に協力要請してみたらどうでしょう。彼らなら力を貸してくれるでしょう。」


 「じゅーしたい?何それ。」


 「亜人の有志による自警団の事ですよ。」


 「へ~そんなんあるんだ・・・」


 魔導院には招集を受けた宮廷魔導士達が集まりだした。タルトはその中心に立ち、段取りをし始めるのだった。


 「ほへー・・・てっきり当主が指揮を執るものだと思ってたけど・・・あのちび助が・・・立派になったもんだ・・・・」


 「私は第一線を退いて今は、相談役と言う立場だからね。名目上の頭目で、実務はタルトに任せっきりだよ。」


 「それはそうと、魔族が朝まで待ってくれますかね?」


 「変な事言わないで下さいよ。オージェン卿・・・貴方がさっき元老院で迂闊な行動しているのですから、シャレになりません。」


 「まぁ、向こうも動く気配が無いから・・・大丈夫なんじゃね。」


 「また、お気楽な事を・・・・」


 魔導院は、慌ただしく動きながら、朝を待つのだった。

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