第19話 眷族

  あの人間が厄災だと言うのか、とてもそうは、見えないと三つ目の魔族は思った。


 「信じられないのは、無理もない。しかし、今のアレは、以前のアレとは、別物だな・・・」


 「アレの存在が確定した以上、次の段階に進む時が来たと言う事か・・・余が再び地上に戻ってこれたのも・・・因果、宿命と言う他ならない。」


 マリアベルは、感慨深げに話していた。一拍おいて三つ目の魔族へ話しかけた。


 「娘、その特異な能力、余の為に使う気はないか?」


 「さっきも言った通り、契約で縛られているから無理だ・・・」


 マリアベルは、フッと鼻で笑うと、右手を突き出し人差し指で何かを弾いた。三つ目の魔族は、何かを断ち切られる感覚に襲われた。


 「契約が・・・破棄された・・・・こんなあっさりと・・・・・」


 「どうだ、余の下に就く気になったか?」


 「それは、願ったり叶ったりだ、是非とも貴方様の配下に・・・」


 「良いだろう・・・だが本題はこれからだ!ただの一配下の魔族になるか・・・余の眷族になるかだが・・・」


 あたしが眷族に・・・本気なのか・・・古き王マリアベルの眷族になれば、圧倒的な力が手に入る。


 「眷族に・・・あたしをマリアベル様の眷族にして下さい!」


 「それは構わないが、眷族に成るのにはそれなりの危険が伴う・・・余の血を分け与えるのだ、それによって肉体の変化が生じる、その急激な変化に耐えられなければ・・・爆ぜて滅する。それでも眷族を望むか?」


 「・・・・今まで死んだ様な物だった。ようやく力を手に入れる機会がやって来たんだ!この機会を逃す訳にはいかないんだ。だから、ここに来た時から覚悟は出来ている!!私を眷族に。」


 「良く言った!力をくれてやろう・・・受け取れ余の血を。」


 マリアベルは、三つ目の魔族に近づき、抱き寄せ唇を奪った。膨大な何かが注ぎ込まれるのを三つ目の魔族は感じた。と同時に全身に強烈な激痛が走る。三つ目の魔族は、天をつんざくが如く悲鳴を上げた。


 「後は、お前次第だ・・・期待しているぞ余の眷族になれる事を・・・」


 三つ目の魔族の体は、ボコボコと音を立て無数の泡が全身に沸き立ち、膨れては爆ぜてを繰り返した。その泡は、次第に大きくなり、やがて一つの大きな塊りへと変わって行った。そして膨れ上がった塊りは、徐々に収縮して行き人の形を型取り始めた。


 「ほう・・・意外と早かったですな、マリアベル様。」


 「特異な能力持ちだったからな、余の血との親和性が高かったのだろう。」


 「三日は掛かると踏んでいたのですが・・・・問題はこれから、肉体の変化には成功したが死んでいましたって事はよくあること・・・」


 「その心配はなさそうだぞ、ファストベル。」


 三つ目の魔族は、以前は浅黒い肌をし髪は茶色の天然パーマで額の目を隠すようにした冴えない姿だった。それが今は、肌色はそのままで髪色は青白く変貌し、ストレートヘアで目を隠すこともなく凛としていた。三つ目の魔族は、自身の両腕を眺め体を震わせていた。


 「なんだこの湧き上がる力は・・・これ程まで違うものなのか眷族と言うものは!これなら誰にも負けない・・・・・」


 三つ目の魔族が浮かれたのは一瞬だった。すぐさま気づいてしまう自分の近くにある二つの大きな力の存在を。


 「潜在的力を感じ取れる様になったか・・・娘よ。」


 今までは、力の差が有りすぎて気づけなかった・・・・マリアベル様は元よりファストベルと言う大男もそれに匹敵する力を持っている。眷族になって強力な力を手に入れたのに・・・これ程まで力の差があるとは・・・・


 「マリアベル様。御身に忠誠を誓います。」 三つ目の魔族は跪き宣誓した。


 「マリアベル様の眷族になったのだ、その眷族に名が無いのは、格好がつかない。名を賜るといい。」


 マリアベルは、少しだけ考えると。


 「そうだな・・・安直だがこれで良いだろう・サザンベル・・・これより娘よ、お前の名はサザンベル。そう名乗ると良い。」


 名を授かったサザンベルは、更なる力の向上を果たし、活力が沸き上がった。


 「サザンベルよ、お前はまだまだこれからだ!力を付け二つ名を持つ位になれば、マリアベル様の側近にもなれるだろうさ・・・期待してるぞ!」


 「精進致します。」 その時だった、強烈な力を放つモノが近づくのをサザンベルは、気が付いた。


 「マリアベル様!!何かが来ます!!」


 「フッ・・・分かっている。」 マリアベルは、何やら含み笑いをしていた。


 ドーーンと言う、爆音と共に一人の魔族が突っ込んできた。


 「ヤー!!マリアベルー。」 元気一杯に声を張り上げて姿を現す。


 「ワーストベル!!貴様、マリアベル様に対して失礼だぞ!!」


 「五月蠅いなーファストベルは・・・マリアベルが良いって言ってるんだから構わないだろ。」


 「相変わらず元気で可愛い娘だな。」 マリアベルは、ワーストベルの頭をナデナデしていた。


 「狼の獣人・・・この魔族が噂に聞く瞬爪のワーストベル・・・・」


 ワーストベル。灰色の毛並みで鋭い牙と爪を持ち、長い尻尾はしなやかで感情の起伏で太く鋼の様に変わる魔狼の獣人の女魔族である。

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