読書
かわいいと思っていつぞやに買ったスツールに、布団を閉まったあと(これもかわいいのだ)、私は近くにあった本を手に取ってパラパラとめくった。これが読書家一般に見られる癖なのか、私固有のものなのかは皆目わからない。とはいえ、私はこの所作の度に、小学生の頃に兄の影響でやっていたカードゲームの記憶を滲ませる。そういうわけだから、意味の次元においては、この癖も私固有のものということに、なるのだろうか。
親指をゆっくりとスライドさせて、黄色いカバーに挟まった白い紙の束を弾いていく。印字された文字たちが、高速で流れていくのを私は目で追った。ああ、ここら辺からは既知だ。この本は確か、元彼と別れた翌週の休日、たしか水曜だったかに買ったんだ。だからまだ途中。
門番のような人だった。けれど、あの人が守っていたのは、他人じゃなくて、他ならない彼自身であったように思う。
本を閉じると、紙の匂いがふっと鼻をかすめた。
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