アングロサクソン

稠密な、丸い顔を近づけて、彼女は僕にこういった。


「そういうとこでしょ」


また始まった。こうも呆れた時の僕の顔は如何なる表情か。


「まあ人間そういうもんっしょ」


彼女は僕の微細な感情表現に気付いたのか、語気を強めて説得を試みる。


「昌樹だけ!いいから早くLINE消してよ」


まただ。こうでは他の女の子と連絡が取れなくなる。そろそろ、彼女ともお別れか、そう思うと何だか切なさが込み上げるものだ。仮令その場しのぎの異性であっても、こうした別れの寂しさというものは覚えずにはいられないものだ。


「めんどいから。もう連絡取らないって言ってんじゃん」


ああ、僕の慈愛は多分、届かないのだろう。彼女の言うことは尤もなのだから。しかし、君は僕のことが好きでたまらないのだろう?現実は非情だ。彼女は不満を顔にも表して怒る。


「あのさ。莫迦にしてんの?そんなん絶対また浮気するに決まってんじゃん。いいから消せよ」


僕のスマホをひったくって彼女は言う。ああ、潮時か。では、如何にして彼女を無難に突き放すかを考えることにしよう。

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