えいゆう

「それでお前はジジェクの森で目覚めたと、そう言いたいんだな?」


「そういうことです。それで、とりあえず森を出てみると、遠くにこの町が見えたんです」


「なるほど......しかし、俄には信じられんな、別の世界からだなんて」


「僕も驚いたんですよ。この町の道中、物語に出てくるような怪物を見たんです。でも、あの怪物はあなた方にとっては普通なんですよね?緑のでっぷりし太った怪物のことです」


「あぁ?オークのことか?」


「オーク!?オークって言うですか、あの怪物は」


「あ、あぁ多分そうだが。何をそんな驚く?第一、オークを初めて見たくらいで別世界からだなんて、いくらなんでも発想が飛躍しすぎだ」


「なに、他に何かあるってんですか?あんな怪物、僕のいた世界にはいませんよ」


「近ぇよ。とりあえず座れ。お前は恐らく漂流者だろう。なんで森で寝てたのかはわからねぇが、大方別の大陸から流れ着いてさまよい歩いた末、あの森に着いた。まあそんなとこだろう。事故から漂着までの記憶を一時的に失っちまってるだけだ。だから落ち着いて、まずは記憶を取り戻すことに集中しろ。お前自分の名前はわかるのか?」


「い、いえそれがわからないんです。しかし、海から流れてくる、などということはあり得ないんです。むしろ、あなたのその解釈でその確信がより強まりましたよ」


「ほう、なら言ってみろ。そのあり得ない根拠とやらを」


「驚かないで欲しいのですが、私の元の世界では世界の外観を知り尽くしてるんです」


「ふん。お笑い種だな。俗に言う賢者さんってことかい。で?お前は何をもって世界を捉えたつもりでいるんだ?」


「茶化さないで下さいよ。僕らの世界には科学というものがあるんです。で、そのお陰で大地がどのように繋がっているかは、僕らにとって自明なんです。しかし、何から説明すればいいのか……今のでは、まるで魔法のような話に聞こえてしまったでしょう?」


「おいおい、魔法で地図は書けんよ。」

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