第23話 静かな東京
電車を降りたはいいが、「終点」という言葉に私は絶望していた。田舎者なので、終点というのは、線路の終わりを想像した。たぶん自分は今、千葉にいると思ったが、周りを見渡すと、どうやら、「東京駅」のようだった。実際には大した距離じゃないのだが、土地勘がないので、秋葉原までどれぐらいあるのか分からなかった。とにかく、「終点なのでヤバい」とだけ思った。
せっかくゲストハウスに入った初日だったが、今日もネットカフェを探して泊まろうと思った。勘でありそうな方向に向って歩くと、そのうちに地元にもあるネットカフェのチェーン店を見つけた。「ここなら会員カードもある」と思って入り、店内のメニューに、「銀座店」と書いているのを見て、自分が銀座に居ることを知った。
最初に座席のタイプと利用時間のコースを決めるが、料金表を見てビビった。地方ならナイトパックで六時間千七、八百円だったのが、銀座だと三時間でも三千五、六百円した。「高いわ」と思ったが、やっぱり辞めときますと言うのも恥ずかしかったし、フラフラだったので結局入った。三時間で起きられる自身は無かったが、延長料金は払いたくないと思いながら、すぐに眠りに落ちた。
二時間半の睡眠でちゃんと目を覚ました。まだ全然酔っていた。コーヒーを飲みながら、パソコンで地図を開いて、それで秋葉原まで三キロもないことを知った。損した気持ちになって、少しでも元を取ろうと、もう一杯コーヒーを飲んで、貸し出しのブランケットとスリッパを鞄の中へ無理やりねじ込んだ。代わりに、いまだに大切に持っていた花束をパソコンの横へ飾ってブースを出た。
まだ夜も明けない道をトボトボと歩いて秋葉原へ向った。東京駅から神田、秋葉原の夜中は新宿と違い、同じ東京とは思えないほど静かだった。
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