「扉の少女」より
SS・ミモルさんちの事情
『扉の少女』のSSです。
ミモルは16歳。3人で地上のとある町に住んでいる設定です。
※妙なテンションにご注意ください。
「はぁ」
「お願いね」
私が二人の声に気が付いて台所にひょっこり顔を出すと、そこには笑顔のエルネアに迫られているフェロルの姿がありました。妙な雰囲気です。何を「お願い」していたのでしょう?
「どうしたの?」
いつもと違う――いえ、いつもこんな雰囲気のようにも思うけれど――空気に戸惑いながらも、ミモルは二人に声をかけてみました。
そろそろお昼ご飯の時間。人は食欲には勝てませんし、なにより育ち盛り。絶対これからもっと背だって伸びるはずです。それに、もし伸びなかったらその時は……。
「あぁ、ミモルちゃん。今ご飯出来るからね~」
「あ、うんっ」
天使が作る料理はどれも絶品です。特にエルネアのご飯はミモル好みの味付け、楽しみにならないわけがありません……ではなくて、美味しいご飯への期待で目的を忘れそうになってしまいました。
「ねぇ、フェロルに何を頼んでたの?」
「フェロルに私の恋人になってもらおうと思って、お願いしていたのよ」
がーん! 頭をこん棒で殴られたみたいな衝撃が走り、思わず定番過ぎる言葉を脳裏を過りました。
「ひ、ひどい、私というものがありながら……!」
「!!」
「ミモル様それ洒落になりませんよ」
半分本気で半分冗談だったのですが、エルネアには効果抜群だったようです。かなりの精神的ダメージを受けて、青ざめた顔で打ちひしがれています。
「ち、違うの、違うのよ……!」
「そうです、違います」
「ん?」
エルネアの狼狽えぶりに、フェロルが冷静にフォローに入りました。3人の間に何かが起きて事態の収拾を図る場合、大抵は彼がその役を担うのです。こういう時は2人でなくて良かったと言えるでしょう。
ミモルはすっとぼけた声を上げたけれど、きちんと「分かって」もいました。しかし、そうなると今度は背中が重くなり、自然と溜め息が出てしまいます。
「いつもの如く、エルネアさんに告白した人を振る口実です」
「あぁ、なるほど。……2人ともこれで何回目だっけ?」
『えーと』
「ううん、本気で答えなくていいよ。気が遠くなるから」
全く、この2人はよくよくモテるなぁと再び溜め息が零れます。事情があるから仕方ないにしろ、天使は町中で暮らすのに向いていないと実感し、森の中の家が恋しくなります。
まぁ、恋人役をお願いするくらいには2人の距離が近くなったといえば、少しは前向きな気持ちになれるでしょうか? すると、いつの間にか復活したエルネアが、がしっとミモルの手を取り、情熱的な眼差しで訴えてきました。
「私の、一番は、もちろん、ミモルちゃんよ?」
「う、うん。分かってるよ」
毎日あれだけ無償の愛情を与えられて分からなかったら人でなしです。でも、だからと言ってミモルを「最愛の人です!」などと紹介したら絶対に変な噂が立ちます。
「大丈夫。私にだってそれくらいの常識はあるよ」
「冷めてません? ミモル様」
いいえ、冷めたのではなくて、大人になったのです。もう16歳なのだから、きっとこれが普通の感覚であるはず。
「だって、フェロルが恋人だって証明するために『してること』も知ってるし」
「う……」
うわぁ、という顔になり、本当に嘘が付けないなぁと思ってしまいます。フェロルは大人の男性なのに、こういうところにミモルは可愛さを感じてしまうのです。……何だか感想を間違えている気もするのですが。
〈終〉
◇昔書いたデータを引っ張り出して改稿しましたが、シュールですよね^^;
本編には載せなかった中には、こんなネタもあったりします。また見付けたらこちらに載せるかもしれませんw
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