第13話 学園→自宅


 放課後、部室に向います。

 昼休み茜さんがサラっと口に出しましたが、私は文芸部に所属しています。たまにしか行かないのですけどね。

 

「こんにちは」

「あ、清白さん久しぶり」


 部室の扉を開けると部長の本田さんが居てくれました。よかった、たまにしか来ないから本田さん以外ほとんど関りないんですよね。


「本読みに来たの?って聞くまでも無いか」

「ええ、お勧めの本ありますか?」

「私を本屋の店員と勘違いしてない」

「店員にこんなこと聞きませんよ、本田さんの選ぶ本が面白いから聞くんです」

「褒めてるようで、体よく使ってるだけってもう分かってるからね」


 バレてましたか。


「先に新入部員に自己紹介してくれない、一応文芸部三年生部員なんだから」


 全く知らない顔もいると思ったら新入生でしたか。


「初めまして、清白 美優と申します。部室に来る事は少ないですが顔ぐらいは覚えておいてください」


 私が丁寧にお辞儀にをすると、「あ、はい」「宜しくです」と声は小さいながらも頭をさげて返答してくれました。

 文芸部は基本真面目で大人しい生徒が多いです。


「清白さんはまるで絵に描いた文学少女のような見た目だけど、来たい時だけ来て読みたい本読んむだけで他は何もしない傍若無人な女子だから」


 私が一番不真面目かもしれませんが、傍若無人は言い過ぎでしょう。


「去年の文化祭で部誌販売を手伝いましたよ。何もしてないわけではありません」

「そうね。自分は一文字も載せてない部誌を「一所懸命書きました」って顔で売り子する清白さんを今でも鮮明に覚えているわ」

「私が執筆した小説を、本田達全員で却下にしたのではないですか」

「グロエロなデスゲーム小説なんて文化祭で販売出来るわけないでしょ!しかもやたら生々しいし…」


 実体験を基に執筆しましたから。


「そもそも私は一年の時「たまに来て小説読むだけでも良い」と許可を貰えたから入部したのです」

「その許可を出したのは二代前の部長、現部長の私が継続する必要はない」

「…規定の時間は部活に参加しろと言いたいのですか?残念ながらそれは出来ません」


 私が文芸部に所属しているのは効率の為です。

 世の中には膨大な本があり新しい本が次々と生み出される為、全ての本を読むなど不可能。

 故に自分が読みたい本を読むなら詳しい人に聞くのが効率的。

 先ほど「本田さんの選ぶ本が面白い」と言いましたが、正確には「本田さんの読破量が多いから私の要望する本を推薦できる」という意味です。

 ですが、余計な時間を拘束されては効率が下がります。


 ……傍若無人も言い過ぎではないかもしれませんね。


「私もそこまで強要はしないよ。でも重要な時は参加して欲しいな~」

「つまり何が言いたいのですか?」

「今年の文化祭でも売り子してください」


 去年の文化祭、私が売り子をしていた時間帯とそうでない時間帯では部誌の販売数で大きな差があったらしいです。


「本田さんがさっき言ったように「絵に描いた文学少女」のような生徒に売り子をしてほしい気持ちは分かりますので、都合をつけてあげますよ。お勧めの本を教えてくれる事が条件ですが」

「私の言葉に増えてるけど、お勧めの本を教えるだけ良いなら交渉成立ね」

「では一先ず今のお勧め本を教えてください」

「今のお勧めはね…」


   ・

   ・

   ・


「清白さん…お~い」

「…何ですか?」

「部活終了の時間だよ」


 もうそんな時間ですか。


「他の人達はもう帰られたのですね」

「皆「さよなら」言ってたのに、無視されて微妙な顔して帰ってったよ」

「気づかなかっただけです」


 まぁ、変に親しくなろうとされても困るので良いですけど。


「相変わらず凄い集中力だね、読書中悪戯されても気づかないんじゃない」

「半径1.5mの『円』に入ったら見ずとも分かります」

「念能力者なの!?」

「一週間で精孔が開きました」

「1000万人に一人の才能!?」

「水見式は水が酸っぱくなりました」

「変化形なんだ!性格は「気まぐれで嘘つき」…当たってる気がする!?」


 余談ですが、文芸部には漫画も置いてあります。漫研部は存在しないのですが、漫画も文芸という理屈で許可が通ったらしいです。

 

 私は帰り支度をし、


「この本借りて良いですか?」

「返却してくれるならOKだよ」

「必ず生きて返しに来ます」

いくさにでも行くの?死亡フラグっぽくて逆に返ってきなさそう」


 デスゲームという戦に行きます。と言っても次のゲームの予定はまだ決まっていないので先に読み終えて返せると思いますが、


 本田さんが部室に鍵をかけ、一緒に校門へと向かいます。

 あ、丁度良いので昼休みのこと訊いてみましょう。


「本田さんは【女子三大天】というのをご存じですか?」

「…敵に回してはいけない女子三人の総称でしょ。白鳳院さん琴宮さん、そして清白さん」

「本当に広まってるんですね」

「三年なってから言われ出した総称だから、皆が知ってるわけじゃないと思うけど…時間の問題かな」

「時間云々以前に、私があの二人と危険人物として一括りにされていることが理解できません」


 私は学校で暴力を振るったことはありません、優等生を演じてますので。

 足が速かったりテストの点が良かったりで目立つ事はありますが、普通の学園生活を送ってます。


「危険人物とまでは誰も言ってないよ。ただちょっと怖がられてるだけで」

「あの二人は分かりますよ、【女帝】とか【スケバン】とかの異名がついてますし、配下も沢山いますから」


 三大天は昔の中国の将。大勢をひきいることが由来なら私は当てはまらない。


「私の配下なんて本田さんだけなのに」

「誰が配下やねん!」


 関西弁でツッコみを入れようとした本田さんの手を視線を向けずに止める。


「言ったはずですよ。1.5m以内なら見ずとも分かると」

「…そういうとこだと思うよ、怖がられてるのは」

「念能力の話は冗談ですよ」

「分かっとるわい!」

「では「そういうとこ」とは?」

「清白さんが怖がられているのは「実力の底が見えない」「何を考えているのか分からない」「本性を隠してる気がする」そういうミステリアスなとこよ」


 清楚な優等生を演じていたつもりでしたが、ミステリアスな優等生と観られていたわけですか。

 

「…それでも「敵に回してはいけない」と言われるほどとは思えませんが」

「まぁ正直、清白さんが女子三大天なのはあの二人と一緒にいることが多いからだと思うけどね」

「やはりそうですよね」


 昼休みの時「私は巻き込まれてるだけでしょう」と指摘したのですがあの二人は否定するんです。


「でも前から清白さんにも異名はあったよ」

「私の…【ミステリアスガール】とかですか?」

「ううん、【暗殺者アサシン】って呼ばれてる」


 危険人物そのものではないですか。


「暗殺はしたことありませんね」


 デスゲームではカメラ映りを意識してますから。


「その言い方だと人殺しはした事あるみたいに聞こえるよ」

「ふふふっ」

「…冗談って言ってよ!?そういうとこだから!ほんとそういうとこ怖いから!」




 校門で本田さんと別れてからは、寄り道せず帰宅。


 ここからはナイトルーティーンを紹介。

 着替えてからまずは宿題を終わらせます、優等生ですから。

 次に夕食。

 メニューは、焼き魚・野菜のお浸し・味噌汁、夕食は少なめです。


 少し間を空けてから夜鍛錬。

 一日の鍛錬の内容と量は日によって違います。 

 デスゲーム前ならゲーム内容に合わせた鍛錬を行います。

 今日はデスゲームの翌日なので軽めの鍛錬です。文芸部も体を休めたい時に行くことが多いですね。

 鍛錬後はプロテインを飲んでお風呂。

 JKらしく美容関係の話もしておくと、私が一番気を遣っているのは髪です。丁寧に洗いトリートメントにも拘っています。

 髪のケアを終えたら、パジャマに着替えてストレッチ。

 ここでまだ眠気がない場合は本を読んだりしますが、今日はもうベッドに着くことにします。


 お休みなさい。


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