第12話 学園
昼休み。
龍宝学園には学食があります。
私が頼んだメニューは、鶏胸肉のソテー・ライス・サラダ・フルーツジュース。
「いつもながら美味しいですね」
お金持ち学校なのでシェフの腕前は一流レストラン級です。
「くそ~、文芸部に負けた~。6.7秒で自己ベストだったのによー」
迎いに座っている茜さんが50m走で負けた事を愚痴ってます。
メニューはビーフカレー・鶏の唐揚げ・豚汁。
昼食だけで牛、豚、鳥をコンプリートしてますね。
「毎日適度な運動を心掛けていますから」
「適度な運動で50m走6.5とかあり得ないですわ」
ボケに対して隣に座っている聖華さんが真面目にツッコんできます。
メニューは白身魚のムニエル・ポタージュ・バケット。
今日はフランス料理の気分みたいですね。
別に一緒に食べる約束をしてたわけではないんですよ。
でも、
茜さんは「先輩一緒に食べませんかー?」とバスケ部後輩の誘いを「今日はクラスの友達と食べるから、また今度な」と断り向かいに座り、
聖華さんも「聖華様一緒に食べませんか?」と初等部からの友人の誘いを「今日はクラスのお友達とご一緒しますので、また誘ってください」と断り隣に座ったのです。
こういう事よくあるんです。
「モグ、ふふひほへはごひ…」
「何を言っているのか分かりせん」
「それ以前に食事のマナーというモノを知りませんの!」
「ゴクン、うっかりだよ、そう怒んなって」
私は怒ってませんが、聖華さんはキツイ目をしてます。
「言いたかったのは、清白家は護身の為に男女関係なく鍛えるって言ってたけど、足が速いのはその為か?」
「八割正解と言っておきましょう」
清白家は武道を男女共に習うのは本当です。私ほど真剣に取り組んでいる人はいないでしょうけど。
「残りの二割は何ですの?」
「私が天才だからですかね」
「自分で言うとかウゼぇ~」
「結果を出して否定出来ないだけに余計癪に触りますわ」
金持ち学校のお嬢様とは思えない返答ですね。
「それにしても、二人はほんと沢山食べますわね」
私と茜さんの前にある料理を交互に見る聖華さん。ですが茜さんはともかく、私は異論を申さないわけにはいきません。
鶏胸肉のソテーもライスも標準的な一人前の量ですから。
「私はサラダの量が多いのです」
私が頼んだサラダは皿ではなくボウルに入っていて、基本のサラダの三人前は優にあります。ついでに言えば朝食のサラダも同じぐらいの量です。
「聖華さんより健康的な食事ですよ」
聖華さんの料理で野菜はムニエルの付け合わせだけ、どちらが健康的かは一目瞭然。
「茜さんのカロリー摂取量が多いのは私も同感ですが」
「運動部なら普通だよ、バスケは走り回るしな」
運動辞めたら直ぐ太るタイプだと思います。
「確かに茜さんは太ってるように見えませんわね。ですが美優さんは…」
「何ですか?」
「美優は尻デカいよな」
「デカくありません」
「足も太いですわ」
「太くもありません。筋肉の分平均やや上なだけです」
「それは自ら平均より太いと言ってますわよ」
「私のウエストサイズは59㎝、平均は63㎝なので私は平均より細いです」
ウエストが細いから、相対的にお尻や足が太く見えてしまうのですよ。
「因みに聖華さんのウエストサイズは?」
「え……は、測っていないので分かりませんわ」
「一月前の身体測定で測りました」
「私は68㎝だったな、結構太いか…」
「茜さんは身長が平均を大きく上回っているので当然です。適正のウエストサイズは身長×0.38と言われています」
「てことは身長が177だと……」
「67.26となりますので、68㎝は適正と言えますね」
「そっかそっか、モグ…」
安心したように唐揚げを頬張る茜さん。
「で、聖華さんのウエストサイズは?身長は私と同じ164cmと以前言ってましたよね、ウエストの適正は62.32です」
つまり私は適正より細い、太ってるどころさ痩せているのです。
「……ウエストとかどうでも良いではありませんか」
「沢山食べるだの、太いだの、言い出したのは聖華さんです」
「そうだそうだ。私達は教えたんだから自分も言えよな」
「………62、ですわ」
「嘘はいけませんね」
私は聖華さんのお腹を軽く摘まむ。
「ちょっ!?何をなさるのです!」
「ふむふむ…、この摘まみ心地は70はありますね」
「66しか…っ!?」
「ふふふ、一番太ってるのは誰かハッキリしましたね」
よく人のこと太いだの言えたものです。
「うぅ~、私にこのような真似をして、只で済むと思ってますの!」
「お!出たな、お決まりの負け犬の遠吠え」
この台詞もう10回は聞いてますが、賠償金を請求されたりなどはしたことはありません。
「二人は私の寛大さに感謝すべきなのですわ」
これも定番のセリフです。
「そういや、二人は近衛のガーゼ剥がれたとこ見たか?」
体育の授業中、近衛君は怪我ながらも参加していたのですが走った際にガーゼが剥がれ、顔を見た先生が即保健室に連れて行ったのです。
「私は見てませんが、見た
「マジでヒくぐらい腫れてた。何処にどうぶつけたらああなんだか」
私に蹴られたらああなります。近衛君は転んでぶつけたと説明してるそうですが。
「本当はカツアゲにあって殴られたんじゃないかって噂されてるぜ」
お金を奪おうだなんてしてませんよ、命は奪おうとしましたけど。
「近衛君の運動能力があれば逃げれそうに思えますけどね」
見事逃げ延びましたよ近衛君は。
彼の運動能力が並だったら、殺れていたでしょう。
「近衛君は運動部ですか?」
「何処にも所属していないはずですわ。中等部ではサッカー部でしたけど高等部では勉強に勤しみたいからと続けなかったそうですわ」
「中等部では結構騒がれてたよなアイツ」
「近衛君はキャプテンでサッカー部が全中に出場出来たのは彼のお陰だと言われていましたわ」
優秀なサッカー部なら足が速いのも納得ですが辞めて二年以上……、走り込みぐらいは続けているってタイプですかね。
「聖華さんって情報通ですよね」
今日は近衛君の事ばかりですが、彼女は多くの生徒情報を把握しています。
「
「龍宝十傑?」
近衛君より気になるワードが出てきました。
「龍宝学園高等部男子人気ランキングでトップ10入りした生徒の総称ですわ」
「私も聞いた事あるな、誰が入ってるとかは知らねぇけど」
「ランキングは基本内部生で決めますけど、三年ともなれば知らない女子生徒の方が少ないと思いますわよ」
私は学校内の情報に興味ないので仕方ありません。
「にしても龍宝十傑とはまた大層な総称ですね」
「いつからそう呼ばれ始めたかは
お金持ち学校の女子生徒が、男子人気ランキングを伝統にしているのですか…。
「男子はあっても女子はないんだよな」
「過去には男子が決める女子人気ランキングを
「龍宝十傑とかそういうのカッコいいから私も呼ばれみたいんだけどな~」
「それならありますわよ、【女子三大天】というのが。茜さんはその三人の内の一人です」
三大天とは、これまた大層な呼び方ですね。
「マジで?聞いた事ねぇけど」
「龍宝十傑と違って女子三大天は悪口に近いですからね。簡単に言ってしまえば「敵に回してはいけない女子」の総称ですわ」
「…私ってそんな怖いか?てか、聖華の方が敵に回したらヤバいだろ」
「不本意ながら
単純な個人の強さではなく、家柄も含めた学校での影響力が強い女子が選ばれるようですね。
「ふふふ、お二人なら納得です」
「何を他人事のように笑っているのですか」
「…と、言いますと?」
「三大天の最後の一人は、美優さんあなたですわよ」
何ですと!?
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