第41話 見切

「そう言えば、なんかガラクタが竜さんあてにいろいろ届いてるんだけど。どうにかして欲しいわね。あんな金属のパイプをどうするつもりなの?」


 セーレを借受けた次の日、ネコさんに連れられて館の倉庫に行くと金属パイプや継ぎ目も判らないほど非常に綺麗な球体などのオブジェが所狭しと積まれていた。


「ワフードさん、どんだけ根を詰めて仕事しているんだい。ああ、これは腕利きの鍛冶師に頼んでエンジンに使う部品を造って送って貰ったんだ。

 こいつだけは、軽いから俺が持って帰ったけど」

「そう、これがあのロケットエンジンになるなんて気が付かなかったわ」

「まあ、無理もないさ写真や資料からしか知識が無くて部品を見せられてなかなか想像がつかないだろうな」


 ネコさんは、興味深げに金属オブジェの山を見やった。


「ところで、竜さんが持ち帰った宝石箱のようなものは何なの?」

「ああ、光を増幅するカラクリだよ。試作品なので、発光部分は俺のスマフォ機能を使ってるけど、光の魔法とかを手に入れたらそれに置き換えるから。

 まあ、見てな。ここにスマフォを置いて、LEDライトを点灯、レンズを調整してと」

 レーザー発振器を倉庫で埃を被っていた古い盾に向けると、眩い光が放射され当たった部分がやがて赤熱する。十秒ほどで、盾に小さな穴が開いた。


「ほう、なかなか威力のあるものね。これなら魔物も倒せそうね」

「そこまでの威力と見るかい?なんだか、ワフードさんの鍛冶屋で試射したときよりも威力が上がってる気がするんだけど」

「ぷっ。ふふ、本当にもう」


 ネコさんが、呆れたように俺を見た。


「以前より、そのカラクリ、レーザーと言ったかしら。そのレーザーの力が大きくなってるのだとしたら。それは竜さんの力が増大したから。理由は、そうね。あのセーレを従えたからね。でも、本当に自分の力が強くなっていることに気が付かないとしたら問題ね、放置しておくと危険だと言えるほどね」

「脅かさないでくれよ、ネコさん」


 しばし、瞑目するとネコさんは有無も言わせぬ口調で。


「特訓よ、今すぐに。幸い、少々袋叩きにしても死なない使い魔も手に入れたことだし。研究室でやれば、無駄な出費も抑えられるわ。

 この間、言っていた新米魔法使いの稽古の方法があると言ったでしょ。別に難しくもなんともないわ。

 ただ、ひたすら魔法を撃つ、ひたすら闘う。魔法使いになるって、そういうことよ」

「ええ、ネコさん。なんだかスパルタなスイッチ入ってませんか?」

「・・・・・・」


「じゃ、このヘルメットを被って。私が合図したら、セーレを呼び出して模擬戦闘を行う。できるだけ、相手の力、攻撃の威力を把握してそれに対処、セーレを効率的に倒せば終了よ。質問は?受け付けないけどね」


 俺の手には、ネコさん謹製の表面を水銀が覆う銀色のヘルメットがあった。

 ネコさんが準備を始めると何処からか触手が何本も現れヘルメットに接続され、目で促され俺は銀色のヘルメットを被った。

 どこか、遠くでネコさんの声が始めろと言ったような気がする。


「出でよ魔界一の速度を誇る魔人セーレ!」


 俺は、木々の生い茂る森にいた。俺の宣言により真鍮の壺から煙が漂うと双子の魔人セーレを象った。

 無言で、セーレが俺に襲い掛かる。

 なんとか、セーレの攻撃を躱した。素早く、セーレの戦闘力を見積もるが、そんなもの判る筈もない。


「ええーい、百万霊子レイス金の劔マネーソード!」


 俺は大上段から、袈裟懸けにセーレの片割れを切り伏せようとした。セーレに触れた瞬間、金の劔は黄金の光となって砕け散った。


「くそっ、自棄だ。十億霊子、金の鎧マネースーツ!」

「十億霊子、黄金の蹴りマネーキック!」


 俺は、絶対防御を誇る鎧を召喚し。右のセーレを前蹴り、左のセーレを踵落としで粉砕し仕留めた」


 ブブー!きゃは、ははは!

 クイズ番組で不正解だった時の音響が鳴り響く。無知を嘲笑う声が森に木霊する。


「やり直しよ、竜さん。根拠のない命令オーダーがどれほどの代償を払わされるか自覚しなさい!」


 俺は、再びセーレたちと対峙した。

 ・・・・・・


「やり直しよ!」


 俺は何度もセーレたちに立ち向かった。何度かはセーレの攻撃に倒され、幾度かは双子のセーレを葬り去った。だが、相手の力量にあった効率的な攻撃がなかなか思うようにできない。

 あと少し、足りない。力がわずかに及ばない。俺は、俺たちは何度も何度も何百回となく戦闘を繰り返した。


「つ、遂にやった。見切ったぞ!」

 

 わかってしまえば、何てことのない。だが、体得できなければいつまでも過ちを繰り返していただろう。


『ああ、ああ、もう。どうせ、こんなことだと思ったよ。折角、クソな魔人どもやご主人の元を離れてこれから、楽が出来ると思ったのにな、兄弟!』

『どうせ、貧乏くじを引くのはいつだってこのセーレ様だよ、判っていたよ。もう、ほんとにー、糞だよ世の中はー、兄弟!』


 遠くの方で二人の愚痴が聞こえた気がしたが、今はやり遂げて気分がいい。

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