第十七話 イフを探す
校舎の中に入ってイフを探す。
彼女はいつも四人組に囲まれて目立つのですぐ見つかった。
廊下を歩いている所だった。
オウル達が取り囲み、イーグルが彼女に何か話しかけ、イフは暗い表情で俯いていた。
オウルがいるのは厄介だな……。
昨日の図書室で思いっきり威嚇されたからな。
だけど、僕は勇気を振り絞って手を振った。
「あ……!」
イフがロウへ視線を向ける前に、オウルがギッとロウを睨みつけ、目線から彼女を隠すように立ちふさがった。
「……オウル」
「何の用だ?」
「イフ、様に用がある。昨日の事で二人っきりで話したいんだけどいいかな?」
「いいわけがあるか。身分をわきまえろ。イーグル、何をしている? こんな事でイフ様の足を止めるな、さっさと行け」
オウルがいらだった様子であご先で廊下の先を指す。
「はいはい、行きましょうかイフ様」
「あ……」
イーグルがイフの背中を押し、先を急がせる。
彼女はロウを見ようとしたが、取り巻きのほかの二人、ファルコやコンドが立ちふさがって見ることもできていないようだった
イフが去っていく背中を見つめながら、ロウはポケットに入っている学生証を握り締めた。
「二等市民の僕は彼女に話しかけることさえできないってことかい?」
「自分をわかっているじゃないか。それが分かったらとっとと失せろ」
シッシッと手で払うオウル。
「本当に過保護だな。自分たち以外誰も近づけさせないようにして……でも、どうしてそこまでする? 大変だろう?」
「彼女が地球人だからだ。俺たちは彼女に悪影響を及ぼす人間を近づけるのを許さない。お前のような、な」
「じゃあなんのために学校に来てるのかわからないじゃないか。学校ではいろんな考え方、いろんな能力を持つ人間と触れ合って互いに高め合っていく場だろう? お前らがそんなことをしていると彼女は偏った人間になってしまうんじゃないのか?」
「そういうのを考えるのは俺たちじゃない。上だ。アカデミーの教師だ」
「………そうかよ」
オウルを説得するのは無理だと、彼から距離を置く。
「ロウ。なぜいきなり彼女に近づこうとする? そんなにイフ様の事が好きだったのか?」
「え……?」
オウルが怪訝な表情を向けるが、それにまともに答えてしまえば、学生証を持っていることがバレそうなので、話を逸らす。
「お前、初めて僕の名前を普通に呼んだんじゃないか? いつもはバンドマンってしか呼ばないし」
だが、ロウの答えを聞いたオウルは呆れたようにため息をついた。
「もうそう呼ぶのも馬鹿馬鹿しくなっただけだ。バンドはもうやめるんだろう? ウェールズ先生から厳重注意をもらって、仲間もいなくなったのだから」
まぁ、ユーリ・ボイジャーに成り代わって『エリクシル』へ行くという役目があるので、どちらにしろバンドを組んでステージに立つ暇はないのだろうが、その言い方だと、まるでランドたちが死んだようだ。
「確かにお前の言う通り、しばらくバンドはやるつもりはないよ。ちょっと忙しくなりそうだしね」
ロウの言う忙しいという言葉にオウルは怪訝な目を向けたが、それよりも馬鹿にしたかったようで、
「やめて当たり前だ、『未来適正評価』から外れた行動は許されない。常識だ」
「だけど、いつかはまたギターを握って音楽を奏でるよ。僕は誰かに言われたレールの上を歩き続ける人生なんて御免だ」
ロウの言葉を聞いた瞬間、オウルは怪訝な表情を向けた。
「懲りろ、と言っているんだ。いい加減大人しく跡を継ごうとは思わないのか?」
「車会社の従業員が僕が将来、最も就くべき仕事だなんて言われてはいそうですかと従えるかよ」
「ハッ……! 自分にそれ以上の価値があると? 笑わせるな。天才でもないただの凡人、低市民の分際で」
ムッとする。そこまで言わなくてもいいだろう。
「フン、いいじゃないか、お前の望み通り、バンドはやめるって言ったんだから。まぁ『未来適正評価』通りの人生を歩むつもりもないけどな!」
くるっと踵を返して、その場から逃げ出した。
オウルは一瞬拳を振り上げたが、ため息とともに降ろした。
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