第33話 2人の対決 後編

 私、森崎由亜は今、メタバース内にあるリーフィの部屋の中でリーフィと一緒にスピアーズとシズクの釣りのゲーム対決の生配信を大画面で視聴していた。


 今回のシズクとの釣りのゲーム対決でシズクの急な提案により、スピアーズのメンバーの1人である虹川さんを賭けてのゲーム対決となった。


 最も、シズクがこの様な賭けに出たのは、私の代わりにシズク自身のやり方で火花さん達スピアーズのメンバー達が虹川さんの草プロ行きについてどう思っているかを聞き出す為である。


「スピアーズの皆さん、殆ど点数が取れてないですけど、大丈夫かなぁ?」


「ユア、ハル達を信じるのです!! きっと大丈夫です!!」


「本当に大丈夫かな?」


 現時点では釣りのゲーム対決はシズクの圧勝であり、肝心のスピアーズ側は殆ど点数が取れていなかった為、シズクのやり方が上手く行くのか私は少し心配であった。


 そんな私達が視聴している生配信では多くのコメントが投稿され、そのコメント内容の多くはソラの脱退に反対をするのと同時にスピアーズの応援をしている内容のコメントであった。


「ユア、今は直接スピアーズのみなさんに思いを直接伝える事は出来ないですけどもここにコメントを残せば、ユアの今の思いを伝える事が出来ますよ!!」


「そうね。これだけ多くのコメントがある中で、私が投稿したコメントに気づく確率は低くても、何も思いを伝え無いよりはいいかも?」


 リーフィに言われ、そう思った私は思いきって今の気持ちをスピアーズの皆に伝える為にコメントを送った。


 お願い、この思いが届いて!!


 コメントが滝の様に流れながら表示される為、私のコメントがスピアーズの皆に気づかれない可能性があるかも知らない為、私はコメントを投降後、火花さん達が気づいてくれる様にお祈りをした。


 その後、私はリーフィと一緒に勝敗の行方を心配しながら、この生配信を見守る様に視聴をした。





 私、火花晴は今、草プロのアイドル系UTuberのシズクの生配信にスピアーズのメンバーと一緒に出演していた。


 そして、釣りのゲーム対決をする事になったのだが、何故かウチのメンバーであるソラの草プロ行きを賭けての釣りのゲーム対決となってしまい、その結果、ソラの今後の事を考えてしまい、私はいつもの様に楽しくゲームをプレイ出来ない状態となってしまった。


 迷っているソラに草プロ行きの一押しをする為に、この勝負はあえて負けた方が良いのか? そもそも、こんなやり方でソラを草プロに送ってもいいのだろうか?


 釣竿を持った状態で、私は先程からこの事ばかりを考えていた。


 そして、約1時間程釣りのゲームが行われた後、シズクの提案の元、ファン達から届いたコメントを読みながらの作戦会議を兼ねた休憩タイムに入る様に進められた為、私達は視聴者に見えない控室に移動をして、ファン達からのコメントを読む為に動画を確認した。


「さっきまではゲーム中だったからコメントには目を通せていなかったけど、相変わらず凄い数のコメントが来てるね」


 すると、そこには多くのファン達からの滝の様に流れるコメントがあり、私達はそんな滝の様に流れるコメントを読み始めた。


 そして、ファン達から届いた大量のコメントに一通り目を通した私は、そこで初めてファン達が思っている気持ちを知る事となった。


 ファン達から書かれたコメントには、ソラがシズクの元に行く事に対して興奮をしているファンも少ないながらいる他、殆どのファン達はソラの脱退に対して反対をしている内容のコメントが多かった。


 それは言い方を変えれば、シズクとの釣りのゲーム対決に対してスピアーズの勝利を応援する内容であり、同時にそれはソラを含めた4人がいるスピアーズの存在を望む内容のコメントであった。


 こんなにも多くの人が、ソラのスピアーズ脱退に関して反対をしているんだ……


 そんな中、私はあるコメントに目が止まった。


「このコメントって、もしかして森崎さん?」


 そのコメントを書いたのは、フォレ猫というユーザーであり、このハンドルネームは森崎さんが使用しているハンドルネームであった為、私はそのコメントを固定して読み始めた。


"お願い、スピアーズは誰も脱退しないで!! 4人が揃ってこそのスピアーズなんだから!!"


 森崎さんも、こう思っているんだ……


 森崎さんの思いが詰まったコメントを読んでいた時、隣にいたユキが突然私の腕を掴んで来た。


「ん? ユキ、どうしたの?」


「ファン達が書いたコメントを読んでいて思ったのだけど…… スピアーズは私達4人が揃ってこそ1つになれるグループなんだって、改めて思わされたよ。1人でもメンバーがいなくなってしまうと、それはもう、今までのスピアーズではなくなってしまうかも知れないと、ファン達からのコメントを読んで改めて思ったよ」


 私の腕を掴んで来た後、ユキは私にこっそりとソラの草プロ行きに対する本音を言った。


「それと、今まではソラが草プロに行けるように、私はソラの草プロ行きを応援していたけど…… ファン達からのコメントを読んだ後だと、やっぱりソラとは別れたくないっていう本心の方が強くなったよ!!」


「ユキ…… その気持ちは私も同じだよ。本当は私だってソラとは別れたくないよ!!」


 私は今まで言う事が出来なかった本音を、大きな声で叫んだ。


 私達はソラの前では、ソラがスムーズに草プロに行ける様に応援をしている素振りを見せていたけど、それはあくまでも表向きであり、本当はソラとは別れたくはなかった。


 そんな思いがファン達から届いた多くのコメントを読んだ事で、より一層強い思いとなった。


「やっぱり、ソラとはずっと一緒にスピアーズとして活動をしたいよ!!」


「わわっ、私だって…… みんなと一緒にいていいのなら、これからもずっとみんなと一緒にいたいわよ!!」


「!?」


 私が心の底で思っていた叫びを声に出して大声で叫ぶと、その言葉を聞いたソラが突然大きな声で返答をした。


 突然のソラの一言を聞き、私は驚いた。


「だったらソラ!! これからもずっと、私達と一緒にいようよ!!」


「私からもお願い!! 草プロになんか行かないで!!」


 ソラの突然の一言を聞いた後、私とユキは全力で今まで言う事が出来なかった本音をソラにぶつけた。


「ハルにユキ……」


「2人がこう言っているんだからさ、ソラはこれからも今まで通り、スピアーズにいるのが一番いいと思うよ」


 その後、ソラが私とユキの名前を呼んだのと同時に、今まで黙っていたウミがどこか照れ隠しをするかの様な表情でソラに対して喋りかけた。


「ウミもやっぱり、私が草プロに行く事に対して反対の考えだったの?」


「そっ、それは…… やっぱり、ソラがスピアーズから抜けてしまえば、私とハルとユキの3人だけになってしまって、メンバーとしてのまとまりがなくなってしまうのが心配だっただけだよ。だからさ、草プロになんか行かずに、今まで通り私達と一緒にスピアーズをやって行こうよ!! ソラ」


 そう言った後、ウミはソラの方に手をさし伸ばした。


「ソラァ!! ずっとずっと、友達だから一緒にいようよ!!」


「ソラァ~」


 その後、私とユキは勢いのままソラに飛び付く様に抱きつきに行った。


「心配しなくても大丈夫よ。私はこれからも、これからもずっとずっとみんなと一緒にいるつもりよ」


 ソラが言ったその事を聞き、私は凄く嬉しくなった。


 やっぱり、スピアーズはこの4人でいないとダメなんだ!!


 多くのファン達も言っている様に、そして、森崎さんも言っている様に、私とユキとウミとソラの4人が揃って初めて1つのスピアーズなんだと、コメントを読んで改めて思った。


「じぁあ、一気に逆転を目指すよ!!」


「おっけぇ~い!!」


「頑張りましょっかっ!!」


「私もスピアーズに残るという意思を、ファン達だけでなく、シズクにも見せつけてやるわ!!」


 そして、私達の心が一つにまとまるのと同時に、私達は円になって右手を真ん中へと伸ばした。


「スピアーズ…… ファイトォ!!」


 そして、私の勢いの良い掛け声と共に、私達は伸ばした右手を元気よく上目と伸ばした。





 その後、私達はシズクが待つ釣り場へと4人一緒に戻った。


「作戦会議は上手くったのかしら?」


「上手く行ったよ、シズクちゃん。この勝負、絶対に私達が勝って、ソラは絶対に誰にも渡さないから!!」


「ほう、どうやら心を一つにまとめた様ね。実に面白い」


 釣り場へと戻った後、ファン達と雑談をしながら待っていたシズクに対し、私は強く自信を持って勝利宣言をすると、それを聞いたシズクはどこか嬉しそうにニヤリとした笑みを浮かべた。


 それと同時に、今さっきの私の勝利宣言を聞いたファン達からの声援のコメントが滝の様に多く流れた。


「みんな、やっぱり4人のスピアーズが好きなんだ」


「このコメントを読むと、コメントを書いてくれたファン達の声援にはきちんと答えないとね」


「そうね。私達4人が力を合わせれば、きっと今からでも逆転は出来るわ。今までもそうであったように、みんなで力を合わせれば、絶対に勝てるわよ。応援をしてくれているファン達の期待に答えましょ!!」


 そんなファン達からのコメントを読んだユキとウミとソラは、応援をしてくれているファン達の期待に答える為、前半の時とは違い完全にやる気モードを見せていた。


 そして、釣りのゲーム対決の後半が始まった後、私達は前半でシズクと差が開いてしまった点を埋める為に、4人全員で力を合わせて点になる魚が潜んでいそうなポイントを狙う事にした。


 この釣りのゲーム対決は4対1というおかげもあり、特にユキとウミの大活躍のおかげもあり、私達は少しずつシズクとの点数差を縮めた。


 ユキとウミに負けない様に、私も魚をたくさん釣らないと……


 そう思っていた時、私が握っていた釣竿が突然凄く大きな力によって急に引っ張られたという知らせが入った。


「ななっ!! これは一体!?」


「ひょっとして、ハルちゃんはこの海に潜む主を引き当てたかも知れないよ!!」


「ぬっ、主!?」


 私が握っている釣竿が引っ張られているのを見たシズクは、驚きながら引っ張っている正体を主ではないかと言った。


「主って事は、もしかして凄い高得点を持っていたりするの!?」


「高得点なんてレベルじゃないよ!! この主1匹で1万点にもなる大物だよ!!」


「いっ、1万点!?」


 更にシズクは、驚きながら主の点数が1万点にもなる事を言った。


 1万点という事を聞いた途端、私はシズク以上に驚いた。


 この大物を釣り上げれば、確実にシズクとの釣りのゲーム対決に勝つ事が出来る……


 そう思った直後、私は思いっきり釣竿を握りしめ、両足を踏み込んで力いっぱいリールを回した。


「ハッ、ハルゥ!! 頑張れぇ!!」


「ハルなら、絶対に釣れるよ!!」


「いっけぇ~!! ハルゥ!!」


 私が主を釣り上げ様とリールを回している時、隣にいたユキとウミとソラの応援をする声が聞こえて来た。


「つっ、釣れろぉ!! この大物ォ!! ソラは絶対に誰に、わっ、渡さないんだからぁ!!」


 私はこのチャンスを絶対に逃さない為、全力でリールを回した。


 ”バッシャーン!!”


 その甲斐もあり、見事に大物を釣り上げる事に成功をした。


 私が釣り上げた魚は、私達が住んでいる町でも有名な魚である鯛という魚だが、私が今釣り上げた鯛は現実にはいない、まるで鯨の様に大きな鯛であった。


「わぁ、すっ、凄いよ!!」


「ハル、マジで凄いよ!!」


 私が主を釣り上げた様子を見たユキとウミが、防波堤に打ち上げられた大きな鯛を見て大喜びをした。


 それと同時に、鯛を釣り上げた時の衝撃から、雨の様な水しぶきが降り注いだ。


 そんな雨の様な水しぶきが降り終わった後、ソラが私の元に駆け寄ると共に、飛び付く様に私に抱きつきに来た。


「ハルッ!! ありがとう!!」


「ソッ、ソラ…… 多くの人が観ている中で、恥ずかしいじゃない」


「今は別にいいじゃないの!!」


 生配信中という事もあり、多くのファン達に観られている中、私は大喜びをしているソラに抱きつかれていた。


 その後、私が釣り場の海に潜む主である大きな鯛を釣り上げたという事もあり、私達のチームは一瞬にして1万点という高得点が入り、シズクとの点数差を大きく開けた結果、私達のチームは奇跡的な逆転勝利をしたのであった。

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