第6話

「何頼んだの?」


青木の質問に、すぐに反応できなかったのは、不覚にも画面を見ている青木のまつげの長さと目元の美しさに見惚れてしまっていたからだ。


青木は、俺が黙っているのを変に思い、padから顔を上げた。

すると、まともに目が合った。

お互い無言のままだった。

体感では、5分ぐらいそうしていたように感じるくらい長かった。


その沈黙を破ったのは青木だ。フッと彼が笑い、つられるように俺も笑った。

ひとしきり笑うとスッキリとして、頼んだ履歴を青木に見せる。

「いつもながら、よく頼んだな」


少々呆れ気味に、青木はリストを眺めている。


「青木も食うだろ?」


「まあ、そりゃ食べるけど」


唐揚げに、串揚げ、サラダに大盛りポテト。

鳥天に焼きそば……。

挙げればきりがない。


padを青木に渡し、俺は飲み物のメニュー表を眺めていると、店員が「失礼します」とやってきた。持ってきた料理とビールが次々にテーブルの置かれた。


店員が去ると、

「「お疲れ様」」

と、乾杯して、一気に飲む。


この瞬間が一番好きだ。

二人してぷはー、と息を吐く。


半分ぐらいになったジョッキをテーブルに置く。

泡も半分ぐらいまでに減っていた。

口についた、ビールの泡をおしぼりで拭きながら目の前にいる青木を見た。


またジョッキを傾け、グイっと飲んでいる。

いつもより、ピッチが速い気がした。


「青木、喉乾いていたのか?」

「ん?なんで?」

「いや、もう少ししか残ってないだろ?」

そう言われて、青木は自分のジョッキを見る。

確かに、底から5センチぐらいになっていた。


青木自身もそれには驚いたようで、

「ほんとだ、言われるまで気づかなかったよ」

「なんかあったか?」

周りに気を配りすぎるぐらいの青木が、自分の飲むペースを自覚じていない……。

俺はおかしく思い、訊ねた。

すると、少し青木の目が揺れた。


一瞬のことだったので、錯覚かと思ったが、やっぱり気になって、もう少し突っ込んで聞くことにした。

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週末の金曜日 立樹 @llias

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