第42話 美術部の試験対策勉強会
下部に前作までの簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。
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時は1年生3学期の初日に遡る。僕は涼島先生(たんにん)の所へ相談に来ていた。
今まで学力を低く抑えて学校生活を送っていたが、和奏や彩衣との生活を考えて、大学や職業の選択肢を狭めないようにしっかりとやろうと思っていたからだ。
涼島先生(せんせい)は驚いていたが、僕の行動を理解してくれた上、アドバイスをもらえた。この学校でテストの点数を公表する訳でもないし、自分で言わなければ分かりようがないので言わなければいいだけだと。
3学期の中間テスト、期末テストで学年トップをとったが騒がれることもなく今に至っている。
* * *
2年生になって1か月も経つと、1年生の時の話が広がり僕は赤点ギリギリくらいの学力だとクラスメートに評価されていた。わざわざ訂正することもないし、唯一知っている茜さんも気にしていなかった。強いて言えば学年順位が1つ下がったことを冗談で言われた位である。
そんな中、事件が起こった。期末テストの1週間前に突然訪れた事件……
テスト前の部活休止期間、1日の授業が終わって彩衣との待ち合わせ場所に行こうと思ったその時、教室の扉が勢いよく開かれた。
「椎弥お兄ちゃん、高校生で初めてのテストが不安だから勉強を教えて欲しいの!」
元気に若葉が入ってきた。ざわめく教室……。若葉は容姿からクラスでも可愛い新入生の一人だと噂が絶えずファンも多い。
数人の男子生徒が若葉を取り囲みなにやら話している。若葉の大きな声だけがはっきり聞こえた。
「…………」
「お兄ちゃんに教えてもらいたいんです」
「…………」
「成績が悪い訳ないです。だってお姉ちゃんに勉強教えてるもん。それで学年1番になったって喜んでたんだもん」
若葉の方に歩いていく、茜も後ろから付いてくる。
「どうせお姉ちゃんって最底辺の高校じゃないのか? それなら俺でも学年1番になれるかもしれないな」
そんな軽口を遮るように茜がしゃべった。
「この子のお姉さんはね、彩光高校よ。わたしも聞いたわ、椎弥くんに勉強を教えてもらって学年1位になれたって。おかげで特Sにもなれたって」
「そんな訳ないだろ、花咲は野球で転校した謙介と同じくらいの学力だったじゃないか」
「みんなごめん、若葉ちゃんが怖がるからそろそろ止めてもらっていいかな。じゃあ若葉ちゃん、美術室で勉強しようか」
若葉を連れて美術室に向かった。その後を茜がついてくる。捨て台詞を残して……
「椎弥くんはね、勉強したのよ、必死でね。だから1年生3学期の中間期末ともに学年1番だったのよ。人を馬鹿にしてないでしっかり勉強しなさい。その時は私が教えてあげるから」
「お兄ちゃんゴメンね。なんか大ごとになっちゃって」
トボトボ歩く若葉。肩を落としている。
「若葉ちゃんは悪くないよ、僕がちゃんとクラスメイトと向き合ってこなかったのがいけないんだから」
若葉の肩に手を乗せる。顔を上げて少し元気を見せてくれる。
「そうよ若葉ちゃん、椎弥くんが悪いのよ。周りの女の子にはモテモテなくせしてクラスではボッチだからね。だから私がフォローして上げてるの」
「お兄ちゃん、まだ中学生のこと引きずってたんだね。なんか思い出させるようなことしちゃった」
「いいんだよ。僕は自分のためにもしっかりやろうって決めたんだ。あえて言うようなことはしないけど、隠しもしてないんだから」
「中村先輩は、お兄ちゃんと仲が良いんですね」
頭を掻く茜。ポニーテールが揺れる。
「ハハハ↓ 椎弥くんはね、私と謙介を結び付けてくれた恩人だからね。出来る事はフォローしてあげたいのよ」
美術室に到着すると彩衣がいつもの場所に座っていた。待ち合わせしていたことを思い出して近くに駆ける。
僕の顔を見上げる彩衣。ニコニコしている。
「それじゃあ仕方ないわね」
クスリと笑う彩衣。
いつのまにか美術部に部員が集まっていた。なつみん、彩衣、茜、若葉、彩恵、そして僕。このままテスト日まで勉強会が放課後に開催された。
テスト勉強期間中に恐ろしいことが分かった。美術部の面々は優秀者が多い。前年の期末テスト、僕となつみんと彩衣は平均点100点、中3期末テスト、若葉が平均94点、彩恵が95点。 落ち込んでいたのが茜、91点だったようだ。
「わたしが勉強教える立場だったのに逆転されちゃったわ……絶対にその高みに上ってやるぞ!」
茜は気合を入れて勉強に励んでいた。
「わたしはお兄ちゃんの生徒だからね、まだまだ伸びるわよ」
声高々に宣言する若葉。
「……わたしは……勉強が好きだから……彩衣先輩!!、それと花咲先輩、私にも勉強教えてくださいね」
モジモジ照れながらもお願いする彩恵。
中間テスト後、茜を筆頭に若葉と彩恵は成績が上がったことに喜んでいた。
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前作までの登場人物:
藍彩高校
2B:花咲椎弥(はなさきしいや):主人公。
2B:中村茜(なかむらあかね) ……美術部、謙介の彼女
(2B担)涼島啓介(りょうしまけいすけ) ……美術部顧問。学園ドラマ好き
1A:原田若葉(はらだわかば) ……中3:和奏の妹、椎弥をお兄ちゃんと慕う
1A:春奈彩恵(はるなあえ) ……若葉のクラスメート
美術部
3B:小鳥遊彩衣(たかなしあい) ……心が分かる。ニコニコしている。
3B:海野夏美(うみのなつみ) ……美術部部長、可愛らしい、元陸上部。
彩光高校
原田和奏(はらだわかな) ……2年:幼馴染、料理が上手い。意地っ張り。
海野美陽(うみのみはる) ……2年:海野夏美の妹、椎弥に惹かれている。
篠原美鈴(しのはらみすず)……2年:和奏、美陽と共に特Sクラス
西田心夏(にしだここな) ……3年:夏美の中学時代のライバル。謙介の姉
西田謙介(にしだけんすけ) 2年:藍彩高校から転校した。茜の彼氏
その他
高野亜紀(たかのあき) ……3年:椎弥・和奏の幼馴染。彩衣の従妹
小鳥遊彩依(たかなしあえ)……3年:彩衣の双子の妹
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