第24話 文化祭①

 下部に前作までの簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。

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 11月。中間テストも終わり文化祭の準備が始まっていた。クラスや部活に出し物の製作に生徒同士で協力して連帯感を高める。

 この時期になると日も短くなるので、帰る時間には真っ暗になることも多かった。

 そんなことも相まって、朝は和奏とは途中までだが彩衣と3人で登校し、下校は彩衣とふたりで帰るようになっていた。

 人からはやされることもあったが、元々学校で目立たないふたりなので直ぐになくなった。


「小鳥遊先輩、椎弥くんと毎日一緒に帰って付き合ってるんですか?」

 茜が彩衣に詰め寄って聞いていた。目は見開き握る両拳が力強い。

「付き合おうという話はしていないし、付き合ってないですよ」

 僕のいない所でこんな話があったようだ。彩衣が和奏に話したようで、この返答は彩衣なりの優しさで、ぼくの選択肢を狭めないように、嘘をつかない範囲で正しく答えているのだと、心情まで詳しく和奏が教えてくれた。


「夏美ちゃん、ホントに良いんですか。今年の文化祭は部室に作品を展示するだけで」

「椎弥(しいやん)、これはだね、来年の入学候補生をゲットするための作戦でもあるのだよ」

「どういうことですか」

「考えてみたまえ、部活を面倒に思っている生徒もいるであろう。その生徒を取り込もうという作戦なのだよ。作品を作ればあとは自由、ここをウリにすればきっと部員が入ってくれると踏んでいるのだよワトソン君」

「夏美先輩、何の真似ですかそれ」

「茜(あかねーん)、ちゃんとノルかツッコむかしてよー。悲しいじゃない」


 部長の一言で展示作品を描きまくっていた。少しでも展示された絵に興味をもって絵が好きな人が入部してくれれば良いなと思う。

 

 僕の耳元で彩衣が教えてくれた。

「椎弥、夏美さんはあんなことを言ってますが、文化祭を回って楽しむ時間を確保したいだけみたいですよ」

「彩衣(あいりん)バラすなんてひどいよー。そんなことすると椎弥(しいやん)を誘惑しちゃうぞー」

 両手を振り上げてポカポカと叩く真似をする夏美。

「どうぞ、選ぶのは椎弥の自由ですから」

「彩衣(あいりん)、なんか最近明るくなった? わたしは嬉しいよー。今度一緒に遊びに行こうよー」

「夏美さん、気のせいです。わたしはいつも通りです」

 そのままいつのも席に戻って絵を描き始めた。


 ただ飾るだけではダメだと涼島先生(せんせい)に言われているので、板や飾りを使って展覧会らしく設営し。更に中央の作業台で自由に絵を描いて展示するスペースをもうけてある。

 もちろん設営は唯一の男子である僕の仕事。

「さっすが椎弥(しいやん)ちっからもちー。椎弥の体が忘れられないよー」

 ペロリと舌を出す夏美。

「ちょっと夏美ちゃん、その言い方だと誤解を招くのでやめて下さいよー」

「……」

 明後日の方を向く彩衣。

「小鳥遊先輩、顔が赤いけど大丈夫ですか。熱があるなら休んだ方がいいですよ」

 茜が彩衣の異変に気付いて近寄った。

「茜さんごめんなさい。大丈夫よ、ありがとう」


 美術部の準備は終わった。クラスの出し物は喫茶店。目立たない僕は意見をいう事もなく謙介と共にウェイター役に決まっていた。


 * * *


 文化祭当日


 美術室で番をしているとお客がきた。和奏、美陽と知らない女性が1人。

「椎弥、友達と遊びに来たよー」

 和奏が手を振りながら美術室に入ってきた。

「久しぶりー、椎弥。覚えてる? 美陽だよ。まだ諦めてないからねー」

 ニコニコする美陽。

「初めまして、椎弥さん。あの時はご迷惑をお掛けしました」

 深々とお辞儀をする女性。和奏が紹介する。

「篠原美鈴(しのはらみすず)、美鈴よ。椎弥が野球をやるきっかけになった茂木先輩の彼女ね」

「あー。和奏が見栄で受けた」

「椎弥さん、あの時は申し訳ありませんでした。売り言葉に買い言葉であんなことになってしまうなんて」

 上目遣いで見つめてくる彼女。そんな目をされると反応に困る。

「いや、僕も楽しかったよ。久しぶりに思いっきり投げられたからね。あれから自分なりに練習は続けてるよ」

「慢心していた茂木(かれ)を助けてくれたおかげで甲子園優勝できました。優勝コメントで名前は出しませんでしたがあなたのことを言っていました。お礼を言いたくて和奏に無理を言って連れて来てもらったんです」

 改めて深々とお礼をする美鈴。僕の隣にきて袖を掴む美陽。

「椎弥ー。折角だから文化祭を案内してよー。椎弥と一緒に遊びたいよー」


「何事だ!」

 美術室に涼島先生(せんせい)が慌てて入ってきた。

「涼島先生(せんせい)、どうしたんですか?」

「どうしたって気づいてないのか、廊下にいる人を」

 慌てて廊下を見ると沢山の男性が集まっていた。その中には謙介。謙介を呼び寄せて小声で状況を聞いた。

「謙介、いったい何だこの人だかりは」

「彩光高校の制服を着た女子が藍彩高校の文化祭に来るなんて何事だと集まっているらしい。俺は茜さんに会いに来ただけだ」

 慌てて美術室に戻って和奏に伝える。

「和奏、とりあえず3人とも準備室に入ってくれないか、事情は後で説明する」


「先生、どうしましょうか」

「困ったもんだ。まあ椎弥を目的に来たんだからお前がなんとかしなさい。みんな特Sのエンブレムをしてるじゃないか。原田さんが彩光高校なのは合宿で知ってたけどまさか特Sとはな。じゃあがんばれよ」

 右手を挙げて出ていった。そういえばいつのまにか夏美ちゃんがいなくなってる。


 段ボールを抱えて入ってくる夏美ちゃん。彩衣に和奏たちの居場所を確認するとそのまま準備室に入って行った。


 出てきた3人は制服を着替えてカツラまで……どこから準備してきたのだろう。

「だめだよー、椎弥(しいやん)。自由気ままに女の子を連れ込んじゃ」

 ニヤニヤとも困ったともとれる顔の夏美。

「ちょっと夏美ちゃん……そんなことしてないよ」

 真面目に返答する僕。クスクスと笑っている彩衣。

「おねーちゃんゴメンね。まさか制服であんなに注目を浴びるなんて」

「ダメだなー美陽(みはるん)は。椎弥(しいやん)に迷惑かけちゃだめだよ」

 美陽の頭をポンポンする夏美。

「ごめんなさい椎弥。まさかあんなに人が集まるなんて……」

 深々とお辞儀をする美陽。


 大きな声で和奏が声を上げた。

「夏美ちゃーん、会いに来たよ。友達も連れてきたんだー。椎弥くん、夏美ちゃんを呼んでくれてありがとうね、じゃー夏美ちゃん、文化祭案内してー」


 ウィンクする和奏。彩光高校の女子3人が僕に会いに来たという事実を夏美ちゃんに会いに来たという事実に捻じ曲げた。これで僕に対する注目が抜けてくれればよいが……。




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前作までの登場人物:

藍彩高校

 1B花咲椎弥(はなさきしいや):人間不信。特定の人は慣れた。

   中村茜(なかむらあかね) ……美術部、椎弥が好き。

   西田謙介(にしだけんすけ)  ……サッカー部、モテる。中村が好き。

 (担)涼島啓介(りょうしまけいすけ) ……担任、美術部顧問。学園ドラマ好き


 美術部

  2A:小鳥遊彩衣(たかなしあい) ……心が読める。気になる存在、料理旨い

  2C:海野夏美(うみのなつみ) ……美術部部長、言動が男を勘違いさせる。


彩光高校

   原田和奏(はらだわかな) ……1年:幼馴染、料理が上手い。意地っ張り。

   海野美陽(うみのみはる) ……1年:海野夏美の妹、椎弥に惹かれている。

   篠原美鈴(しのはらみすず)……1年:3年生元野球部キャプテンの彼女

   茂木源太(もぎげんた)……3年:野球部元キャプテン。椎弥と野球対決した。

その他

   原田若葉(はらだわかば) ……中3:和奏の妹、椎弥をお兄ちゃんと慕う


夏美が付けた仇名 椎弥ん(しいやん)、茜ん(あかねん)、彩衣(あいりん)、石原部長(さっきん)、和奏ん(わかなん)、美陽(みはりん)

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