4-12
クルールがファランと戦っている間、ジュンとルイーザも別の戦いを繰り広げていた。
クルールの圧倒的な実力を目の当たりにし、「自分たちの出番はなさそうだ」と思った2人だったが、塔の一角に設置された巨大な大砲を発見する。それはリフィリア王国を狙う兵器に違いなかった。
「これを放置したら、王国が危ないね。僕らはこっちを片付けよう」
ジュンの提案にルイーザがうなずく。
大砲の周囲には数名のファランの部下らしき人物が守りについていた。その中で主任らしい男が、2人の存在に気づき、冷笑を浮かべる。
「ふん、こちら側には雑魚を送り込むとは。随分と甘く見られたものだ」
「なっ…誰が雑魚だって!?」
雑魚呼ばわりされたルイーザが憤慨し、ジュンが肩をすくめる。
「まあ、僕らがクルールほど強いわけじゃないのは確かだけどね。けど、そっちは大丈夫? あんたらのボス、クルールに勝てないみたいだよ?」
その挑発に、主任の男はニヤリと笑う。
「クルールが強いのは認めよう。だが、こいつが発射されれば話は別だ」
主任は、手元のスイッチをちらつかせながら、大砲のエネルギー充填を始めようとする。
「このスイッチを押して充電開始だ。あと3分もすれば、リフィリア王国は焼け野原さ。止められるもんなら止めてみろ!」
そう言ってスイッチを押そうとする瞬間、乾いた銃声が響いた。
「…何っ!?」
主任の手元からスイッチが吹き飛び、地面に転がる。続けざまにジュンが2発目を撃ち、スイッチは完全に壊れた。
「これでその大砲は使えないってことでいいかな?」
ジュンが冷静に言い放つ。
だが、主任はまったく動じていなかった。むしろ、勝利を確信したように余裕の笑みを浮かべる。
「フハハハ! 馬鹿め! お前は自ら停止手段を破壊してくれたんだよ。このスイッチは発射停止ボタンも兼ねていたのさ。つまり…もう止める方法はない!」
その言葉とともに、大砲のエネルギー充填が進み始める。内部のシステムが起動し、機械のランプが赤く点滅を始める。
「これでリフィリア王国は終わりだ…!」
主任が勝ち誇ったように言い放ったその時、ランプが突然消え、機械全体が停止した。
『ビービービー…エラー。システム破損…』
「な、何だと!? エラーだと…!? 設計は完璧だったはずだ!」
主任は大砲を確認しようと駆け寄り、異常の原因を探ろうとする。
「設計は完璧でもね、物理的に壊したらどうなると思う?」
冷静な声が響く。主任が振り向くと、大砲の中央部分に一本の矢が突き刺さっていた。
「た、たかが弓矢で!? 馬鹿な、この大砲は上級魔法にも耐えられる耐久性を持っているんだぞ!」
「残念ね。私の弓矢には『貫通』の効果を付与してあるのよ」
ルイーザが淡々と答える。
さっき地下でクルールから教わった技――貫通の技術。それは、上級魔法ほどの破壊力はないものの、精密な機械を破壊するには十分だった。
「これで大砲はもう使えない。残念だったね」
ルイーザの言葉に主任が膝をつき、敗北を悟る。
「くっ…この俺が…」
大砲の停止を確認したジュンとルイーザは、肩の力を抜いた。
「クルールもそろそろ終わってる頃かな?」
「そうね。じゃあ、戻りましょうか」
2人はお互いに頷き合い、クルールの元へと戻ろうとした。
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