3−3

ジュンの提案にルイーザは驚いた表情を浮かべた。


「私たちがトルクさんを護衛するってこと?」


「そうだね。武器なしでこの平原を越えるのは難しいだろうし、僕らが手伝えばいいんじゃない?」


ルイーザは少し考え込み、やがて首を縦に振った。


「そうね。このまま放っておくわけにはいかないし、安全な場所まで護衛するのはアリかもしれないわね。」


「でも、それでいいんですか?」とトルクが遠慮がちに言う。「あいにく持ち合わせがあまりなくて・・・」


「それなら、いつか商人としてビッグになったときに、僕たちの探検隊を贔屓にしてくれればいいよ。」


探検隊のスポンサーになってくれる商人がいれば、今後の冒険が楽になるかもしれないという、少し打算的な提案だった。


「分かりました。それで良ければ喜んで。」とトルクは小さく笑みを浮かべて言った。


「よし、じゃあ契約成立!」とジュンは元気よく声を上げた。


これで、トルクを護衛する依頼を引き受けたことになる。


「で、トルクさんはどこまで行く予定なの?」とルイーザが尋ねる。


「ああ、この先の森にある村まで行きたいんです。」


トルクの目的地は、リフィリア王国に向かう途中に広がる大きな森の中にある村だった。道沿いに進めば迷わずに到着できるはずだ。


「まあ、一番の問題は無事にたどり着けるかというところだけど・・・」ルイーザが言いながら指差した先に、何かが迫ってくるのが見えた。


徐々にその姿がはっきりしてくる。それが何か、すぐに分かった。


「どうやら、さっきのゴブリンたちが仲間を連れて戻ってきたみたいね。」


「うわ、マジかよ。しかも、これかなりの数いるんじゃない?」


ざっと数えると20~30体ほど。その中に、一際大きな青色の個体が1体混じっている。あれがリーダー的な存在だろうか。


ゴブリンの群れがジュンたちを囲むように展開し、退路を完全に塞いだ。


「お前たちか。我が可愛い部下を痛めつけたのは。」

青いゴブリンが低い声で言い放った。


・・・え、喋った?驚きでジュンの思考が止まる。スライムは喋らなかった気がするけど。


「ねえ、ルイーザ。魔物って喋るの?」


「え?この状況で驚いてるのはそこなの?」ルイーザは呆れたように言った。


「いや、色違いが現れたのもびっくりしたけど、喋る方がインパクトあるって。」


「まあ、ある程度上級クラスの魔物になると喋るのもいるわよ。」


マジか・・・。ジュンは目の前の青いゴブリンに目を向けた。その名は【ハイゴブリン】。緑色のゴブリンを束ねるリーダー的存在で、通常のゴブリンよりも遥かに強いとされる個体だ。


「喋ることは置いといて、あんたたちがトルクさんを襲ったのが原因じゃん。襲われたら身を守るくらいするもんでしょ?」ルイーザが毅然とした態度で言い返した。


「どうやら立場が分かっていないようだな。この辺りは我らの縄張りだ。縄張りを通るなら、通行料くらいは払ってもらわないとな。」ハイゴブリンは冷たく言い放つ。


「はあ!?ただの平原を通るのに通行料なんておかしいでしょ。そんな理不尽な要求、断固お断りだから!」


「どうやら、力づくで理解させる必要がありそうだな。」

ハイゴブリンが指をパチンと鳴らすと、ゴブリンたちが群れをなして襲いかかってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る