3−2

エドガー平原を抜け、次の目的地はルイーザの故郷、リフィリア王国。

まずは現在の状況を国に報告するためだ。


ルイーザによれば、水江の街からリフィリア王国まではワッフルの速さでおよそ2日ほど。

平原を通るだけなら特に問題はないはずだ。


とはいえ、探検隊として、そして個人としても成長したい。

途中に立ち寄る村にはギルドの依頼もあるらしいので、寄り道して力試しをするつもりだった。


「それにしても、びっくりするくらい広い平原だよね。見渡しても何もないよ」

ジュンはワッフルの背から景色を眺めながら感嘆した。


あるのは整備された道と、ところどころに立つ看板だけ。

この平原もどこかの異界から取り込まれたものなのだろうか。


「それにしても、この異界を人工的に作ったギガロって、一体何者なんだろうね?」

ルイーザは冒険の前にクルールから聞いた「世界改変の黒幕」に興味を抱いていた。


「目的は分からないけど、こんなことをやらかすんだから、ろくな奴じゃないよな」


とはいえ、ギガロとはいずれ再び相まみえる気がする。

あの時は手も足も出なかったけれど、次こそは──とジュンは心を引き締めた。


「強くならないとな…冒険しながら、僕らも成長しないとね」


そんな話をしていると、ジュンが突然前方を指さした。

「えっ、ルイーザ、あれ見て!」


彼が指さす先、坂の下で、大きな荷物を背負った男が緑色の魔物に追いかけられていた。


「ゴブリンね。あの様子じゃ、かなりの数がいるみたい」

ルイーザは目を細めて状況を分析する。


「ゴブリンか…ゲームで見たことあるけど、本物は迫力があるな」

ジュンは心なしか震えた声でつぶやいた。


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!助けないと!」


ルイーザはワッフルの背を軽く叩き、急かした。


ワッフルが勢いよく加速する。風を切る速さに、ジュンは必死にしがみついた。

「は、速い!想像以上だ!」


目にも止まらぬ速さでゴブリンの群れに突っ込み、ワッフルがその巨体で体当たりをかました。

「グギャッ!」と悲鳴を上げ、ゴブリンたちはあっさり吹き飛ばされる。


ワッフルが荷物を背負った男の前でピタリと止まると、ルイーザとジュンはワッフルを降りた。


「ジュン、大丈夫?」

「だ、大丈夫…そのうち慣れると思う…」

足元がふらつくジュンを見て、ルイーザは苦笑する。


一方、荷物の男は深々と頭を下げた。

「助けていただいてありがとうございます!私はトルクと申します。商人をやっております」


「私はルイーザ、こっちはジュン。私たち、探検隊なの」

「ところで、どうして護衛をつけないで旅してるの?商人なのに危ないよ」


トルクは申し訳なさそうに肩をすくめた。

「実は護衛代を節約していたのですが…武器もゴブリンに壊されてしまってね」


武器が壊れることは、この世界では珍しくないらしい。

修復には個人差があるが、だいたい一週間はかかるという。


それを聞いたジュンが思いついたように言った。

「だったら、僕たちが目的地まで護衛してあげたらどうかな?」

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