3−4

ジュンは襲ってきたゴブリンの一体を銃で仕留め、ルイーザも短剣を構えて別のゴブリンを倒す。だが、ゴブリンの包囲網が彼らの動きを制限していた。


「ジュン、この包囲だとワッフルが加速できない! 体当たりができないわ!」

ルイーザが焦りを含んだ声を上げる。ゴブリン達が密集しているため、ワッフルが走るための距離を稼げなかった。


「なるほどね。だったら、僕らの力だけで突破するしかないか」

ジュンが答えるが、その目は状況の厳しさを物語っている。加えて、トルクを守りながら戦わなければならないというハンデもある。敵の数は圧倒的だ。


それでもジュンとルイーザは、互いに援護しながら一体ずつ確実にゴブリンを倒していく。しかし、敵のボスであるハイゴブリンが怒声を放つ。

「たった二人相手に何を手間取っている!一気にかかれ!」


ゴブリン達が数の暴力でじわじわと二人を追い詰めてくる。戦闘は激化するが、敵の数が多すぎる。体力が尽きる前に突破口を見つけなければならない。


ジュンは周囲を見回し、ある方向に目を留めた。

「ルイーザ、合図をしたらワッフルを走らせられる?」

「距離さえ確保できればね」

「分かった。それまで持ちこたえて」


ジュンは敵のいない方向に銃弾を次々と放つ。ゴブリン達が怪訝な顔を浮かべる。

「何を狙っている? 我々には当たってないぞ?」


その時、ジュンが最後に撃った弾の音に続いて、別の音が響いた。ハイゴブリンの頭上にある木がバキバキと音を立てて倒れ込む。


「ちっ、こしゃくな!」

倒れた木を見て、ハイゴブリンが舌打ちする。さらに、ルイーザが火の魔法を放ち、その木に炎を宿らせた。


炎が燃え広がると、ゴブリン達は怯み、動きが鈍る。ジュンはその隙を逃さない。

「今だ、ルイーザ! 正面突破するぞ!」


ワッフルが全力で走り出し、燃え盛る木を突き破るようにして前進する。ハイゴブリンのいる正面に向かって突撃し、さらに加速。密集していたゴブリン達を次々と弾き飛ばし、敵の陣形を崩した。


「これで道が開けた。このまま逃げるよ!」ジュンが叫ぶ。

「全部倒さなくていいのか?」ルイーザが問い返す。

「うん、今はトルクさんを安全に目的地に送るのが最優先だよ」


戦いを続ければ勝てる可能性もゼロではない。だが、ハイゴブリンは強敵で、さらにトルクを守りながら戦うのはリスクが高すぎる。撤退は賢明な選択だ。


ルイーザはワッフルを全力で走らせ、追跡を振り切ることに集中する。敵の姿が徐々に遠ざかり、ついには完全に見えなくなった。どうやらゴブリン達は諦めたようだ。

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