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国から調査依頼を受けた翌日、私は相棒のワッフルに乗ってリフィリア王国を出発した。
まずは東へ進むことにした。
「水江」という街に、クルールというギルドのマスターがいるらしい。彼に会うことを勧められたのだ。
しかし、水江という街の名前は初めて聞くし、東へ向かえというざっくりした情報しかない。
どうやらこの旅は、かなり行き当たりばったりになりそうだ。
ひたすら東を目指し、1日目の夜、小さな川沿いで野宿をした。
暗くなり、星空を見上げて思う。
「こんな世界でも、星は見えるんだな…」
私が元いた世界とは違う星空なのだろう。それでも、その景色はどこか懐かしく、美しかった。
不思議と気持ちが落ち着き、その日はゆっくり眠ることができた。
翌日も情報がほとんどないまま、ただ東を進む。
途中、食料補給のため立ち寄った街で、ようやく水江の場所についての情報を得た。
「この平原を抜けた先にあるらしい」と教えてもらったその言葉を頼りに進むと、目的の街が見えてきた。
水江の街には、見たことのない建物が立ち並び、異国のような雰囲気を漂わせている。
ここもまた、私の住むリフィリア王国とはまるで異なる場所だ。
リフィリア近郊に現れた新しい街の雰囲気と似ている気もする。同じ異界に属する場所なのだろうか。
街の探索は後回しだ。まずはクルールという人物に会うのが先決。
ギルドの場所を尋ね、案内された建物に入る。
建物の中は、リフィリア王国のギルドとは異なり、受付と掲示板だけのシンプルな構造だった。
どこか支店のような印象を受ける。
受付に立っていた緑の服を着た男性がこちらを見た。
「何の用だ、嬢ちゃん」
「あの、私、リフィリア王国から来ました。ギルドの方から、あなたに会うよう勧められて…」
「リフィリアからか…なるほど。この世界の現状を知りたいんだな?」
何も詳しく話していないのに、どうして分かったのか。驚いていると、彼は続けた。
「お前みたいな奴がここに来る理由なんて決まっている。この世界がこんな風になった原因は、この近くにあるからな」
「え?」
クルールはさらに説明を続けた。
ギルドが追っていたある組織のメンバーが、複数の異界を融合させて新しい世界を生み出す機械を起動させたこと。
それが原因で、現在のような状況が生まれたこと。そして、ギルドは各異界の人々に共通の価値観を持たせ、混乱を抑えようと動いているということ。
「何か…話が壮大すぎて理解が追いつかない…」
「まあ、今話せるのはこの程度だ。で、お前はこれからどうする?」
「そうね…まだ調査の旅は続けたいわ。もっといろいろ見て回りたいし」
「なら、探検隊に所属してみるのはどうだ?」
「探検隊?」
クルールは探検隊について説明した。
探検隊として活動すれば、調査で得た成果が報酬となる。また、ギルドの依頼も受けられるため、旅の資金を確保しやすいという。
だが、私は首を横に振った。
「いいえ、どこかに所属するのは違うわ。私は自分の探検隊を結成する!」
この世界の調査だけでなく、大切にしている導きのコンパスの謎も解き明かしたい。
そのためには、自分の目的に共感してくれる仲間と一緒に旅をする必要がある。
自分の意思をクルールに伝えると、彼は少し驚き、そして笑った。
「都合よく、そんな冒険者が見つかればいいけどな…」
この後、私の探検隊を一緒に結成してくれる仲間と出会うとは、この時点ではまだ思ってもいなかった。
それがジュンと出会う少し前の出来事だった。
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