2章番外編 ルイーザの旅立ち

1

「これは……」


私は目の前の光景に息を飲んだ。突然、眩い光に包まれたかと思った次の瞬間、目の前には見たこともない巨大な塔がそびえ立っていた。


それは明らかに、私が知るリフィリア王国の技術や建築様式ではない。異様なまでに壮麗で、どこか機械的な雰囲気を纏っている。その姿に、私は思わず立ち尽くしてしまった。


「ここは……別の異界なのか?」


状況を理解するための確かな理屈は何もない。それでも、私は直感的に悟った。おそらく、何らかの原因でこの未知の世界に飛ばされてしまったのだ、と。


しかし、さらに驚くべきことに、背後を振り返るとそこには見慣れた風景が広がっていた。幼い頃から親しんできたリフィリア王国のお城だ。


見知らぬ塔と馴染み深い城――一方は未知の場所、もう一方は故郷そのもの。この奇妙な光景に、私は混乱を隠せなかった。


「どうしてこんなことに……」


訳の分からない状況に困惑しながらも、私はまず冷静になるためにリフィリア城下町へと戻ることにした。


町の様子は混乱そのものだった。人々は突然現れた異界の建物に怯え、不安そうにざわめいている。その光景を見て、私は逆に冷静さを保てた。この異常事態で冷静になれる自分に、少し驚きさえ覚える。


その日の城下町はパニック状態だったが、翌日には住民たちも徐々に落ち着きを取り戻していた。王国は、ギルドと連携して原因の究明と対策に乗り出し、早速会議が開かれた。


その結果、まずは周辺地域の調査を行うことが決まった。異界の塔や周囲の状況を調べ、得られた情報を共有するのが最優先事項だ。


私も相棒のワッフルとともに調査に参加することになった。


「ワッフル、行くよ!」


私は大きな相棒に声をかけた。不安よりも冒険への期待が勝っていた。未知の世界に踏み出すことが、どうしようもなく胸を高鳴らせていたのだ。


調査を進める中で、目にするものすべてが新鮮だった。見たことのない建物、聞いたことのない言葉を話す人々、そして多様な種族。私たちの王国には存在しないような、異質な文化と雰囲気が漂っていた。


現地で話を聞くうちに、この世界の特徴が少しずつ分かってきた。どうやら、この場所はさまざまな異界から人々が集まり、共存しているようだった。それだけ奇妙なものが溢れているのも納得だ。


さらに調査を進めると、この状況に困惑しているのはリフィリア王国だけではないと分かった。他の異界から来た人々の中にも、私たちと同じく異界の存在を知らない者が多かったのだ。


調査結果を国に報告すると、王国はさらに広範囲の調査を依頼してきた。この新たな世界についての記録を集め、報告すること――つまり、自由に旅をして見たものを記録すればいい、ということだった。


そうして、私の長きにわたる冒険の旅が正式に始まった。

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