2−6
隊長が自分に務まるのだろうか。自分自身の過去を振り返る。
小学生の頃から、委員長候補に名前がよく上がった。周りからは頼りにされることが多かったが、その度に自信のなさを理由に逃げてきた。責任を背負うことに不安を抱え、やりたい気持ちはあっても一歩を踏み出せなかったのだ。
だが、今回の冒険は自分の意思で始めたものだ。ならば、ここで自分の限界を決めずに挑戦してみてもいいのではないだろうか。ルイーザに背中を押されたのも何かの縁だ。二人での冒険を充実させるために必要な役割なら、自分が隊長を引き受けてもいい。そう決意した。
「分かった。自分でいいなら、隊長をやるよ」
「うん!ジュンならそう言うと思った。ありがとう!よろしくね、隊長さん!」
「まったく、調子がいいんだから。でも、よろしくな」
「さて、隊長が決まったところで次だ。チーム名をどうする?」とクルールが口を挟む。
「さあ、隊長の最初の仕事だよ。チーム名を考えようか」とルイーザが笑顔で促す。
チーム名か。これからの冒険を共にし、この名で成果を上げていく。どんな名前がいいだろう……少し考えた末、口を開いた。
「シンプルに『ルイーザ探検隊』でどうかな?」
「え!?私の名前を使うの?」ルイーザが驚きの表情を浮かべる。
「うん。自分の名前が入っていると責任感も生まれるし、探検隊の一員だって実感できると思うんだ。ほら、ルイーザ、さっき『暴走しないように気をつける』って言ってたでしょ。自分の名前がついた探検隊なら、きっとその意識も強くなるんじゃないかなって」
その話を聞くと、クルールが腹を抱えて笑った。
「はっはっは!面白い案じゃないか。確かにルイーザにはぴったりだな!」
「いや、まさかそう来るとはね……うん、いいんじゃない?ちょっと恥ずかしいけど、自分の名前が入った探検隊って悪くないかも」
「では決まりだな。『ルイーザ探検隊』!隊長はジュン、副隊長はルイーザ。これで正式にスタートだ!」
こうして、『ルイーザ探検隊』が誕生した。
名前にルイーザが冠されているにも関わらず、隊長は彼女ではなくジュンが務めるという少し風変わりな探検隊。それでも、その名にはジュンの深い思いが込められている。
これからどんな冒険が待っているのだろう。不安もあるが、それ以上に期待が膨らむ。そして、ルイーザとならきっとどんな困難も乗り越えられる。そんな気がしていた。
「今日は新しい探検隊が誕生した記念すべき日だ。この街にある牛丼屋でお祝いといこう。今日は俺のおごりだ」
異世界の人が牛丼を気に入るとは思いもしなかった。祝いの席が牛丼屋というのも少し拍子抜けではあるが……。
こうして、ジュンとルイーザ、そしてクルールの三人で、『ルイーザ探検隊』の誕生をささやかに祝ったのだった。
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